空気亜鉛電池技術を利用したエネルギー貯蔵システムを開発――リチウムイオン電池より安全かつ低コストで容量拡張が可能

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Photo: Zinc8

カナダのスタートアップZinc8 Energy Solutions(以下、Zinc8)が、空気亜鉛電池技術を利用したエネルギー貯蔵システム「Zinc8 ESS」を開発し、注目を集めている。数日分のエネルギーを蓄えることができ、劣化することがなく、爆発する可能性もない。価格もリチウムイオン電池と比較して最大で5分の1の安さだという。アメリカのニューヨーク州では試験運用も始まる模様だ。

Zinc8 ESSの特徴は、独自に開発した空気亜鉛電池技術にあるという。空気亜鉛電池技術はこれまでにも注目されてきたが、充放電するうちに亜鉛電極上にデンドライトと呼ばれる樹枝状の突起が形成され、ショートを引き起こすなどの問題があることから実用化への道のりは遠かった。しかし、Zinc8はデンドライトを形成させないようにするのではなく、電極上に形成されたデンドライトを除去し、エネルギー貯蔵に利用する亜鉛粒子として再利用するという逆転の発想で成功を収めたようだ。処理過程の詳細は企業秘密だとしている。

Zinc8 ESSは、亜鉛再生サブシステム、貯蔵サブシステム、発電サブシステムといった3つのモジュールで構成される。亜鉛再生サブシステムは帯電した亜鉛粒子を生成し、副産物として酸素を大気に放出する。生成された亜鉛粒子は貯蔵サブシステムの貯蔵タンクに流し込まれ、必要になるまで水酸化カリウム(KOH)電解液中で保存される。亜鉛は電解液中で数カ月間保存でき、1日当たりの貯蔵電荷損失は約1%程度だという。電力が必要になると、亜鉛粒子は発電サブシステムのパワースタックに送り込まれ、亜鉛を酸素と再結合させて発電し、電荷が取り出されてグリッドに送られるという仕組みだ。発電時の副産物である酸化亜鉛(ZnO)は、貯蔵タンクに戻されて再利用される。

Zinc8 ESSは、20kW~50MWの電力を供給し、8時間分以上のエネルギー貯蔵できるという。貯蔵タンクのサイズとタンク内の電解液容量を増やすことでエネルギー貯蔵容量を増やせるため、価格を低く抑えることができ、拡張も可能なシステムだ。

Zinc8 ESSで8時間分のエネルギー貯蔵にかかる資本コストは、約250ドル(約2万7000円)/kWhで、32時間分に容量を拡張した場合は100ドル(約1万1000円)/kWh、100時間分で60ドル(約6600円)/kWhだという。一方、リチウムイオンバッテリーは、一般に約4時間分のエネルギーしか貯蔵できず、8時間を超える貯蔵容量を達成するにはバッテリーを2個以上使う必要があり、そのコストは約300ドル(約3万3000円)/kWhだ。

Zinc8 ESSでは、亜鉛、酸素、水の正味消費量はないが、電極とパワースタックは劣化するため、使用状況に応じて数年ごとに交換する必要があるという。

Zinc8 ESSの往復効率(入力エネルギーの内最終的に出力されるエネルギーの割合)は約65%で、リチウムイオンの95%には及ばないが、蓄電コストを考えるとZinc8 ESSの利用価値は高い。

Zinc8が開発した空気亜鉛ハイブリッドフロー電池は、エネルギー貯蔵の概念を大きく変革しそうだ。風力発電や太陽光発電を、低コストで安定したエネルギー供給ができるベースロード電源にすることもできるかもしれない。

関連リンク

Zinc-Air Regenerative Fuel Cell System

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