ゲルマニウムのスピントロニクス電子デバイスで消費電力1/10、室温での磁気抵抗比100倍を実現 大阪大学

大阪大学は2020年6月19日、半導体材料のゲルマニウム(Ge)を用いたスピントロニクス電子デバイス構造の新技術を開発したと発表した。消費電力1/10、性能指数100倍と室温での世界最高性能を達成したという。

Ge中に電子のスピン自由度を電気的に注入し、不揮発メモリ機能を付加しようという半導体スピントロニクスデバイス研究が世界で展開されており、2011年に世界で初めて低温でのGe中のスピン伝導の観測が報告されている。しかし、スピン注入、スピン伝導を実証する際に高抵抗絶縁体層の存在による大電圧駆動を要することが課題となっていた。また、低消費電力動作と高性能を両立することが困難だった。

そうした中で研究グループは、半導体Geと高性能スピントロニクス材料(ホイスラー合金磁石)を直接接合した低接合抵抗の電極構造を用い、Ge電子デバイス中で純スピン流を生成、輸送することに成功していた。一方で、スピン伝導デバイスの室温磁気抵抗比が0.001%以下と非常に小さいことが課題となっていた。

しかし、最近の研究により、数nm領域で原子同士の拡散(相互拡散)が、電極に用いたホイスラー合金磁石とGeの接合界面に生じており、磁石電極の性能劣化が引き起こされた結果、スピン伝導デバイスの性能も劣化していることが明らかになった。

今回の研究では、異種原子である鉄(Fe)原子をホイスラー合金磁石とGeの接合界面に数原子層だけ挿入すると、原子の相互拡散が抑制され、ホイスラー合金磁石が高品質化、高性能化した。さらにその高品質化によって、スピン注入の過程でエネルギーバンドの対称性マッチングが有効に作用していることが判明。室温での性能指標(磁気抵抗比)がこれまでの100倍に増大し、世界最高性能となる消費電力1/10、性能指数100倍を達成したことが明らかになった。

左.バンド対称性マッチング型のスピン注入機構の概念図、右.室温での高性能化

今回の研究成果は、これまでよりも数桁低い接合抵抗値で達成する電極構造を用いていることから、低消費電力かつ高効率な半導体へのスピン注入技術の実証となる。IoT(モノのインターネット)技術、AI(人工知能)技術が進展する中、電子機器の低消費電力化に貢献する室温動作半導体スピントロニクスデバイスへの道を切り拓く成果と言える。

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