光に無反応の高分子膜でも表層の光反応で膜全体が動く――新たなレリーフ構造形成法を提案 名大

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

名古屋大学は2020年7月30日、光に反応しない高分子膜でも表層のみの分子膜の光反応で、フォトパターン通りに膜全体が大きく動き、表面レリーフ構造ができる現象を見出したと発表した。

光に反応(トランスーシス異性化反応)するアゾベンゼンの高分子膜へのパターン露光で物質移動がもたらされ、表面レリーフ構造が形成される現象が1995年に発見されて以来、その現象の理解や応用に向けて研究が進められている。光物質移動現象はアゾベンゼン分子のトランスーシス異性化反応が関連しているとされるが、具体的な物質移動の機構については未だに説明されていない。

研究では、高感度に動く液晶高分子の光物質移動現象は表面からの作用が重要であると仮定し、光に反応しない液晶高分子膜の表面に数nmレベルのアゾベンゼン高分子膜をのせて光を当てる実験を行った。表面膜の膜厚を分子レベルで正確に制御するために、光に反応しないPCPBz膜の上にラングミュアーシェファー(LS)法でPAzの短分子膜を一層ずつ表面に転写し、その後にフォトマスクを介して適切な温度条件で紫外光を照射した。

その結果、光に反応しない200nmあるいは430nm膜厚のPCPBz膜でも、数nm膜厚の光反応性PAz表面層が存在すると、膜の流動性が増す90℃付近であればフォトマスクのパターン通りに膜全体に物質移動が起こり、効率的に表面レリーフ構造が形成された。一方、表面にPAz膜がないと、同条件では物質移動は全く起こらなかった。PAz膜の膜厚が増すと、下地のPCPBzの膜厚にほぼ無関係に比例して、形成される表面レリーフ構造の高低差が大きくなった。したがって、レリーフの高低差は表面層のPAzの膜厚で制御できる。

実験では、PAz単独膜で作成した表面レリーフ構造とPAz膜を表面に析出させたPCPBz膜のレリーフ構造を比較。PAz膜があるPCPBzでPAz単独膜と同様なレリーフ構造が見られた。紫外可視吸収スペクトルを観察したところ、PAz膜があるPCPBzは単純なPCPBz膜と同様の光吸収特性を示し、強い光吸収がないことから、実質的に無色透明のレリーフ膜ができる。従来のアゾベンゼン高分子膜は黄色に着色し、透過型回折格子などの光学素子への応用に不向きであったが、本研究によって簡便に無色透明のレリーフ膜が作れることが示された。

表面だけの作用であることから、この液晶高分子系での物質移動は表面張力差によるマランゴニ効果で起こると考えられる。移動方向が偏光方向に依存しないことも、マランゴニ効果が移動の原因であることを裏付けている。

さらに、光表面レリーフが効率的に形成されるPAz膜の表面に2nm圧の長鎖アルキル高分子の短分子膜をLS法で1層覆ったところ、物質移動がほとんど起こらなくなった。これは、膜内部のアゾベンゼン高分子が光異性化しても、分子レベルでも紫外線光照射で表面張力が変わらない素材で覆われるために移動現象が起こらなくなったと考察される。マランゴニ効果によって物質移動が起こり、2nmという無視できるわずかな最表面の膜だけで大きな効果が得られることを示している。

本手法であれば、光に反応しない高分子膜材料も光物質移動の対象となり、可視域に光吸収を持たない透過性型回折格子やマイクロレンズアレイなどの光学素子の簡便な作成などへの応用が期待できる。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る