セミクラスレートハイドレート生成過程の過冷却を抑制するメカニズムを解明 早稲田大学など

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潜熱蓄熱の研究開発に取り組んでいる早稲田大学、大阪大学、パナソニックの研究グループは、2021年6月22日、「セミクラスレートハイドレート(SCH)」の生成過程で起こる過冷却現象を抑制するメカニズムを解明したと発表した。潜熱蓄熱の実用化には潜熱蓄熱材の過冷却現象が課題となっていたが、同グループはSCHを利用した潜熱蓄熱材の実用化に道を開く成果だとしている。

利用されずに環境中に排出される熱エネルギーを有効活用する手段の1つとして、蓄熱技術が注目されており、同グループでは第四級オニウム塩によって生成されるSCHを使った潜熱蓄熱技術の実用化に取り組んでいる。第四級オニウム塩は常温常圧でSCHを生成することが知られている。

SCHは、水素結合によって水分子が作る籠状構造の内部にゲスト分子と呼ばれる分子が包接されてできる結晶である「クラスレートハイドレート」の一種。SCHはゲスト分子を選択することで約30℃の範囲で相変化温度をデザインでき、オニウムカチオンのアルキル鎖長やカウンターアニオンの種類によってハイドレートの分解温度を変化させることができるため、潜熱蓄熱材に適しているとみられている。

しかし、実用化に当たってはSCH生成時における大きな過冷却が課題だった。同グループはこの課題を解決するために、水溶液サンプルから凍結割断レプリカ法により溶液構造由来の凹凸をかたどったレプリカ膜を調製し、そのレプリカ膜を電子顕微鏡で観察して、過冷却抑制剤とクラスター生成との関係について系統的な調査を行った。

その結果、ペンタン酸銀とフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)を添加した系において、約5nmの銀ナノ粒子が生成され、それを起点に直径10~30nmのクラスターが生成する瞬間を画像に記録した。

SCH生成前の水溶液サンプル#1、#2、#11、#13から凍結割断レプリカ法により調製されたレプリカ膜の電子顕微鏡(HAADF-STEM)画像

ペンタン酸銀を添加したサンプル#11および#13では、5nm程度の銀ナノ粒子が多数観察される。ペンタン酸銀とTBAFを両方とも添加したサンプル#13では、温度281K(7.85℃)で既に10~30nmのクラスターが存在し、冷却するに従って、クラスターの数密度が増加。その結果、小さい過冷却度でSCHが生成することが確認された。

また、銀ナノ粒子とTBAFの協奏効果によって、溶液中で原子や分子が集合したクラスターの生成が促進されることで、SCH生成過程での過冷却が抑制されることも確認。パラジウム、金、イリジウムなどの貴金属ナノ粒子は過冷却抑制効果が小さいことや、そのメカニズムも明らかにした。

同グループは、この研究結果により明らかになったSCHにおける結晶生成メカニズムと過冷却抑制方法を利用すれば、潜熱蓄熱材の実用化が加速するほか、医薬品や食品、機能品、宝石、環境、エネルギー分野での結晶作りにおける生産効率や品質向上に役立つことが期待できるとしている。

今回の研究成果は、2021年6月18日に国際科学誌『Communications Materials』オンライン版で公開された。

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