ポルシェ「911 GT2 RS」が3Dプリント製軽量ピストンを採用――最高出力は730馬力に

独ポルシェは、部品メーカーのマーレ(MAHLE)、機械メーカーのトルンプ(TRUMPF)と共同で、ポルシェのスポーツカー「911 GT2 RS」のエンジン用のアルミピストンを3Dプリンターで作製した。従来の鍛造ピストンより軽量化と効率化を図り、最高出力を700馬力からさらに30馬力引き上げたとしている。

ポルシェはこれまでも、ポルシェ911と718用のボディフォームフルバケットシートや、クラシックモデルのスペアパーツに3Dプリント技術を活用してきた。今回の3Dプリントピストンの製作にあたり、「設計、材料の仕様、適切なプリントのパラメーター設定まで、最適な結果を得るためにかなりの微調整が必要だった」と、マーレの製品設計責任者であるVolker Schall氏は語る。

設計には、人間の骨格などを模倣するバイオニックデザインの手法を採用し、他よりも高負荷となる部分にのみ材料を付加することで、ピストンの剛性を上げながらも部品を軽量化することに成功した。さらに、3Dプリントならではといった特殊形状の冷却ギャラリーをピストンリングの近くに配置した。この冷却ギャラリーによって、トップランドの温度負荷を軽減し、燃焼効率が最適化される。

製造にはトルンプが得意とするLMF(レーザーメタルフュージョン)法、いわゆる金属3Dプリントを利用している。高純度のアルミニウム合金粉末をレーザーで溶融しながら1層1層積み上げ、12時間で約1200層のピストンブランクを製造した。部品の検査には、光学メーカーのツァイス(Zeiss)も、CTスキャンや顕微鏡検査などで協力し、従来のピストンと同等の品質を確認した。ピストンスカートとピンボア部分には特に注意を払ったという。

完成した6個のピストンは、ポルシェ911 GT2 RSのエンジンに組み込まれ、約135時間に及ぶ高負荷運転など、テストベンチを使った200時間耐久試験をクリアした。

ポルシェのアドバンスドライブ開発部門のFrank Ickinger氏は「新しく軽くなったピストンのおかげで、エンジン回転数を上げつつ、ピストンの温度負荷は下げて、燃焼を最適化できる。700馬力のツインターボエンジンからさらに最大30馬力を引き出すことができ、効率も改善する」と語る。

今回のプロジェクトを通してポルシェは、高品質で小ロットの生産に対応できる3Dプリントを、メーカーには製造とプロセスの革新、ユーザーには魅力的な製品をもたらす技術だと評価している。

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