水素燃料電池の寿命を延長する技術を開発

Credit: Gustav Sievers

ベルン大学を中心とする国際研究チームは、従来の触媒とは異なり、炭素担体を必要とせず、より安定した水素燃料電池用の電極触媒を開発した。研究成果は、『Nature Materials』誌に2020年8月24日付で公開されている。

燃料電池は、再生可能な資源から水素を製造できればカーボンニュートラルを実現する装置となるため重要視されている。しかし、効率的に発電するためには、電極表面を電極触媒で覆わなければならない。現在、白金―コバルト合金ナノ粒子が電極触媒として一般的に使用されているが、炭素担体に担持する必要がある。炭素は腐食するため、時間の経過とともに燃料電池の効率と安定性が低下する。

これまでにも炭素担体を必要としない電極触媒が開発されているが、触媒の表面積が小さく触媒活性が低下するため、工業用途には適していなかった。

今回研究チームは、陰極スパッタリングという手法を応用して、炭素担体が不要で活性が高い電極触媒を実現した。陰極スパッタリングは、イオン衝撃を利用して材料金属を原子化し、叩き出された原子が基板上に堆積して被膜を形成するという手法だ。

開発した電極触媒は、陰極スパッタリングとその後の処理により、非常に多孔質な構造となった。この構造のおかげで、担体を必要とせずに大きな表面積を可能にした。また、高温、高電流密度でも安定した活性を示す。

研究チームによれば、今回開発した手法は工業的に利用可能であり、自動車産業などにおける燃料電池の大量生産にも拡張できるとしている。

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