ロームは2020年9月1日、従来構成と比較して出力を約30%高めたVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)モジュール技術を開発したと発表した。TOF(Time-of-Flight:空間認識/測距システム)の高精度化に寄与することが期待される。
昨今、スマートフォンの顔認証システムや空間認識システムでのレーザー光源として急速に普及が進んでいるVCSELは、自動化を伴うアプリケーションなどでより高い精度のセンシングが求められており、光源の短パルス(10ns以内)駆動や高出力化が必要となっている。
今回同社が開発したVCSELモジュール技術は、同社のモジュール用の新たなVCSEL素子とMOSFET素子を1パッケージにモジュール化したもの。素子の性能を引き出すべく、回路の配線長に比例する素子間の寄生インダクタンスを極小化し、高速駆動と高出力化を実現した。
これにより、太陽光による外部ノイズの影響を低減する短パルス駆動が可能となったほか、モジュール化していない従来構成と比較して約30%の高出力化を達成している。また、1パッケージ化により実装面積や回路設計負荷が削減されたほか、駆動効率が向上したことでアプリケーションの省電力化にも寄与する。
同モジュールを用いたレーザー光源、TOFセンサー、制御ICで構成した空間認識/測距システムでは、TOFセンサーへの反射光量も従来構成比で約30%増加させることが可能となっており、TOFシステムの高精度化に繋がることが期待される。
今後同社は、2021年3月までに同モジュールの製品化を目指す。高精度のセンシングが求められるモバイル向け顔認識システムや、産業機器のAGV(無人搬送ロボット)などでの用途を見込む。また、車載用LiDARなどに対応可能な高出力レーザーの技術開発も並行して進めていくとしている。