- 2023-12-18
- 技術ニュース, 電気・電子系
- Energy Storage Materials, NIMS, その場X線回折(in situ XRD), その場発生ガス分析法(on-line MS), ソフトバンク, リチウム過剰系電極材料, 物質・材料研究機構, 研究, 透過型電子顕微鏡(TEM), 電圧ヒステリシス, 高エネルギー密度蓄電池用電極材料
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンクの研究チームは2023年12月15日、高エネルギー密度蓄電池用電極材料で起こる放電電圧が充電電圧よりも著しく低くなる現象(電圧ヒステリシス)の原因を解明したと発表した。今後、さらに詳しく現象を解明していくことで、高容量と高エネルギー効率を両立するリチウム過剰系電極材料の開発につながることが期待できるとしている。
次世代の高容量正極材料として、LiCoO2など従来の正極材料よりも多量のリチウムイオンを含有し、かつ、安定して脱離挿入できるリチウム過剰系電極材料が注目されているが、充放電時の電圧ヒステリシスが大きく、充放電時のエネルギー効率が低いという課題がある。
研究チームは、リチウム過剰系電極材料のモデル材料としてLi2RuO3を用いて、充電前後の結晶構造を、その場発生ガス分析(on-line MS)、その場X線回折(in situ XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)を使って解析。その結果、放電後の結晶構造が充電前の構造に戻っているにもかかわらず、電圧ヒステリシスが観測されることを発見した。さらに、さまざまな先端分析技術を用いて、充放電時の電極の構造変化を詳細に解析したところ、結晶構造が変化する「経路」が充電時と放電時とでは異なることを突き止め、リチウム過剰系電極材料における電圧ヒステリシスの原因が、結晶構造が変化する「経路」にあることを明らかにした。
今回の研究では、電圧ヒステリシスが起きる原因をすべて解明できたわけではなく、未解明な部分へのさらなる検討が必要となる。研究チームは「今後、結晶構造の変化に着目して材料を検討することで、高容量と高い充放電エネルギー効率を両立するリチウム過剰系電極材料の開発加速が期待できる」としている。
研究成果は2023年11月6日、Energy Storage Materials誌にオンライン掲載された。