金属を10倍強化できる可能性も――MIT、超高速加工による結晶粒微細化メカニズムを解明

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レーザー誘起粒子射出法により10μmの銅粒子を銅基盤に超音速で衝突させると、ナノスケールで生じる双晶欠陥を核として新しい超微細なナノスケール結晶粒が生成することが明らかになった。/Image: Courtesy of the researchers

MITの研究チームが、金属材料を超高速で加工変形させたときに起こるナノスケールの結晶粒微細化メカニズムを、先端的の物理解析機器および電子顕微鏡を用いて明らかにすることに成功した。レーザー誘起粒子射出法により、10μmの銅粒子を銅基盤に超音速で衝突させ、銅結晶が動的に再結晶を起こす過程を詳細に調べた結果、ナノスケールで生じる双晶欠陥を核として、新しい超微細なナノスケール結晶粒を生成することを見出した。従来の金属よりも10倍も高強度化できる可能性があり、アルミニウムや鋼、チタンなど広く用いられている金属において、より強くて軽量の材料を製造する道に繋がると期待している。研究成果は、2022年5月19日に『Nature Materials』誌に報告されている。

金属材料を構成する基本単位である結晶粒は、その粒径が小さくなればなるほど、引張強度や衝撃靭性などの基本材料特性が向上する。そのため、結晶粒微細化は金属学および技術者にとって永遠のテーマだ。一般的には、金属を加工変形して歪みを付与するとともに、加熱することで歪みにより導入される転位集積を核として、新しい微細な再結晶粒を生成する手法が用いられている。金属をさまざまな用途に適した形状に成形する圧延や鍛造、鋳造、機械加工といったプロセスにおいて、再結晶現象を利用した結晶粒微細化手法が採用されているが、鋼やアルミニウムなどの汎用金属では、数μm程度の微細化に留まっており、ナノスケールでの微細化は極めて難しい。

近年、圧延や鍛造のような通常の金属加工プロセスよりも、数桁のオーダーで高速なプロセスを用いて大きな歪みを加えることで、ナノスケールの微細な結晶粒が得られる例が報告されるようになった。金属粉末の高エネルギーボールミリングや、表面皮膜を形成するコールドスプレーなど、実際の産業プロセスにおいてもナノ結晶構造が得られているが、微細化メカニズムについては必ずしも充分に解明されていない。

MITの研究チームは、レーザー誘起粒子射出法により10μmの銅粒子を銅基盤に超音速で衝突させ、粒子と基盤表面の結晶粒構造が動的に再結晶を起こす過程を、電子線後方散乱回折法と走査型透過電子顕微鏡を組み合わせて詳細に調べた。その結果、超高速で大きな歪みの加工変形により、結晶の一部がその方向を鏡面対称反転する、双晶と呼ばれる格子欠陥が生じ、局部的な加工発熱に伴って双晶を核としたナノスケール再結晶粒を生成することがわかった。

衝突による変形が高速であればあるほど、このようなナノ双晶が多く生じるとともに、ナノスケールで反転および再反転が多数繰り返される。それによって、得られる再結晶粒のナノスケール微細化が促進されて、従来の金属よりも10倍も高強度化できる可能性があることを確認した。研究チームは、超高速加工の変形量や変形速度の効果を系統的に調べ、様々な金属材料やプロセス方法に対して最大の効果を得る条件に関する指針が得られており、強くて軽量の材料を製造する道を切り拓くと期待している。

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