昭和電工は2020年10月16日、リチウムイオン電池(LIB)のセパレーターのセラミック耐熱層用バインダー用に最適化したポリ-N-ビニルアセトアミド(PNVA)「GE191シリーズ」の展開を本格化すると発表した。
PNVAは、工業化に成功したN-ビニルアセトアミドを重合した水溶性高分子で、水素結合を多く有するように設計され、200℃の高温処理でも劣化しない耐熱性や、金属酸化物粒子をより均一に分散/安定させる特長を持つ。
GE191シリーズは、セラミック耐熱層の要求特性に応えたグレードとして、耐熱層の高耐熱化と薄膜化に貢献する。塗工層の高耐熱化によりリチウムイオン電池の安全性/耐久性を向上させるバインダーとして、車載用リチウムイオン電池にも採用されている。
一般的なセパレーターは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄膜で構成され、LIBが異常発熱して温度が高温になると、セパレーターの結晶が融解して膜が収縮し、電極同士が接触、短絡して発火など重大な事故が発生する恐れがある。一方、GE191シリーズを添加したセラミック耐熱層をセパレーターに塗工すると、GE191シリーズ自体の高耐熱性に加えて、アルミナやベーマイトなど耐熱層の無機粒子と水素結合により強固に結着することで、異常発熱時でもセパレーターの形状が保持され、電極同士が接触、短絡する危険性を回避できる。
また、GE191シリーズは水との親和性が高く、増粘性(レオロジー特性)も高いため、セラミック粒子が均一に分散して低剪断時でも高粘性を確保し、剪断速度に応じて粘度が下がる性質(チキソ性)に優れている。そのため、GE191シリーズをバインダーに使用することでセラミック耐熱層の保管性(沈降防止)が向上し、セパレーターや電極への均一な塗工や工程改善に効果があり、ロス削減によるコストダウンにつながる。
昭和電工は、PNVAや水系バインダー樹脂ポリゾール、パウチ型LIB用包材のSPLAF、正負極材添加剤VGCFなど、LIBの高性能化に貢献する多くの製品を提供し、顧客の要望に応える最適なソリューションを提案して、さらなる事業拡大を目指していく。