大阪大学は2020年10月28日、高強度パルスレーザーを用いた動的超高圧実験により、ナノ多結晶状態のダイヤモンドが高速変形する際の強度を明らかにしたと発表した。「これまでに公表されているあらゆる物質の中で最高の強度となる」としている。
材料を多結晶状態にすることによって、その強度が向上すること自体はすでに知られているが、結晶粒をnmレベルまで微細化したナノ多結晶体が、高速変形下でどのように振る舞うのかまでは明らかになっていなかった。
研究者らは、多結晶状態にした効果が最大になると考えられる数10nmサイズの微結晶を焼結させ、ナノ多結晶状態のダイヤモンド(NPD)を合成。高強度パルスレーザーで数ナノ秒という非常に短い時間にNPDを高速変形させ、光のドップラー効果を利用した独自の高精度観測システムにより、その圧縮変形特性をリアルタイムで計測することに成功した。地球中心圧力の4倍を超える1600万気圧まで加圧され、NPDの体積が元の半分以下にまで変形していく様子を観察したという。
その結果、NPDが高速変形下でおよそ208万気圧もの弾性強度を有することが分かった。これは、単結晶ダイヤモンドの2倍以上の値だ。NPDと単結晶ダイヤモンドにおける大きな強度の違いは、高速変形下におけるナノ結晶粒間の相互作用がより顕著に現れることを示している。
本研究成果は、極限環境で用いる構造材料や高性能セラミックスなど、高い強度が要求される材料の研究開発に影響を与えることが考えられる。