立体的な曲面構造を持つグラフェンのデバイス作製と特性解明に成功 東北大学 

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東北大学は2020年11月5日、周期構造を備えた立体的な曲面構造を持つグラフェンのデバイス作製とその特性解明に成功したと発表した。立体グラフェンデバイスの開発が進むことが期待されるという。

高い電気伝導性/熱伝導性、化学耐性、機械耐性、高効率で広帯域の光吸収特性などを持つ炭素による2次元シートであるグラフェンは、2次元シートを用いて立体的な周期的曲面構造を構築すると、単純な2次元グラフェンとは異なる特性が発現する。研究グループでは、周期的立体構造を持つグラフェンを作製し、さまざまなデバイス特性を評価しているが、同物質が持つ3次元的な曲面や疑似的な周期構造がグラフェン本来の物性をどのように変調するのか実験的には明らかにできていなかった。

この課題に対し、意図的にグラフェンの曲がり具合を示す曲率半径を変えることにより、グラフェンの物性を3次元集積化(曲面の詰め込み具合)がどのように変えるのか、一定体積当たりどこまでの集積効率ならばグラフェンとしての特性を保持できるのかなどを検討した。

研究グループは、炭素1個分の厚さしかない原子層物質である2次元グラフェンシートをモチーフとする3次元構造体を作製。立体的な曲面構造を持つグラフェンが2次元グラフェンの特性を大きく上回る優れた物質であること、立体的な曲面構造がグラフェンの特性にどのように影響するのかを明らかにした。

今回、これまでで最も曲率の高い曲率半径25~50nmの試料を含む大幅に曲率の異なる3種類の3次元ナノ多孔質グラフェン(25~50nm、50~150nm、500~1000nm)の作製に成功。グラフェンの電子物性に立体的な曲面構造が与える影響について調べた。

立体的な曲面構造を持つグラフェンは、2次元グラフェンと比較して巨大な表面積を持つことから、2次元グラフェンと比較して静電容量が1000倍程度増大した。曲率半径は、小さくなるにつれて静電容量が増大することから、体積当たりに含まれる総表面積が増大していることを示す。これらは、乱雑にグラフェンを配置しても得られない特性だという。

電気伝導度は、曲率半径500~1000nmの試料で平面状のグラフェンと比較して1000倍程度増加。一方、曲率半径が小さくなると減少することを観測しており、立体的な曲面構造を持つグラフェンは、グラフェンの体積あたりの総表面積の増大に対し、電気伝導度が必ずしも増大するわけではないことが明らかになった。

角度積分光電子分光の測定からは、曲率の増大とともに、エネルギーに対して線形な状態密度が減少することが分かったという。電気二重層トランジスタを利用した電気伝導度の測定からは、曲率半径の減少に対して、試料の幅と電圧端子間距離で規格化した電気抵抗が系統的に増大するが、スイッチング比の増大は観測されなかった。この結果は、3次元多孔構造に局所的に含まれるさまざまな疑似的周期構造の影響によって局所的にバンドギャップが形成されている可能性があることを示している。

曲率半径に依存した多孔質グラフェンの電子物性 a.多孔質グラフェンの電子状態密度を反映した光電子分光スペクトル b.投影面積で規格化した曲率半径に依存した多孔質グラフェン電気抵抗のゲート電圧依存性

電気伝導度の温度と磁場依存性を測定した結果では、ゼロ磁場中の電気伝導度が低温で温度Tに対する自然対数(logT)に比例することのほか、曲率半径の減少とともに、その温度領域と傾きが増大することが明らかになった。

特に50-150nmと25-50nmの2つの試料は、定常磁場を印加した状態で電気伝導度の温度変化を測定すると、50-150nmの試料は電気伝導度のlogTに比例した成分が磁場に対して増減する一方で、25-50nmの試料は電気伝導度のlogTに比例した成分が大きな変化を示さないことが分かったという。

曲率半径に依存した多孔質グラフェンの電子物性 a.2 Kにおける値で規格化したゼロ磁場中での電気伝導度の温度変化 b,c.0-15 Tの磁場中における最低温度での値を差し引いた電気伝導度の温度依存性

曲率半径に対する電気伝導特性の変化と、立体的な曲面構造による電子散乱効果の関係を調べるために、磁気抵抗効果とラマン散乱の測定を実施。その結果、25~50nmの試料は強い電子散乱の効果のために負の磁気抵抗効果が支配的になり、同時にラマン散乱で2つの異なる電子状態内と電子状態間をそれぞれ差し渡す電子散乱に関係するD’バンドとDバンドと呼ばれる2つのピークが顕著に増大することが分かった。

曲率半径に依存した多孔質グラフェンの磁気抵抗効果とラマンスペクトル a.磁場に対する電気抵抗の変化をゼロ磁場における値で割って定義した2 Kにおける磁気抵抗効果の磁場依存性 b.ラマン散乱強度のエネルギーシフトに対する変化

これらをまとめると、曲率半径50~1000nmの試料は、立体的な曲面構造による電子散乱効果は存在するが、グラフェンの質量ゼロのディラック電子状態が持つ量子位相に由来した低散逸な電気伝導が支配的であると言える。

一方、曲率半径25~50nmの試料は、立体的な曲面構造による高頻度な電子散乱によってディラック電子による低散逸な電気伝導が強く抑制された結果、電子間のクーロン相互作用に由来する電気伝導度の補正効果が強く現れていると考えられる。

これらの研究成果から、例えば底面積が1mm2の場合を考えて、総表面積が1mm2の2次元グラフェンと総表面積が~1000mm2の50~150nmの同グラフェンを比較した場合、同グラフェンはグラフェンの特性を維持していることから総表面積の増大分だけ体積あたりの性能値向上が十分に見込めるという見積もりができる。

体積当たりの表面積と電気伝導性やキャリア易動度が求められるデバイスを考える上での性能指標となる研究結果となっており、小さくかつ高密度にすればするほどよいというわけではなく、グラフェンの特性を保持できるデバイスサイズが重要であるなど大きな設計指針を示したと言える。今後、研究から得られた曲率に依存した3次元グラフェンの性能値をもとに、さまざまな3次元グラフェンの設計と開発が進むことが期待される。

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