持続可能社会を実現するための重要な移動手段として普及が進む電気自動車(EV)の多くは、大容量のリチウムイオン電池を採用しており、車のトータルパフォーマンスはこの電池の性能に大きく左右される。
EVの大きな課題のひとつは、充電に時間がかかることだ。リチウムイオン電池の充放電時間を短くするために、電極材料の粒子を小さくする方法が採られてきたが、こうすると体積あたりの電池容量(エネルギー密度)が下がるという欠点があった。
今回、韓国の浦項工科大学(POSTECH)の研究チームは、充放電の間に相転移の中間相が形成されれば、電極材料の粒子を小さくしたり、エネルギー密度を下げたりすることなく高出力が実現でき、これによって、長持ちするリチウムイオン電池の開発が可能になることを確認した。
研究チームの開発した合成方法を使用すると、中間相が誘導され、これが緩衝構造として作用する。中間相の形成によって、多数の粒子で構成される電極内の電気化学反応が均一となり、充放電時間が劇的に向上。その結果、研究チームが合成したリチウムイオン電池の電極は、6分で最高90%まで充電でき、18秒で54%放電できると報告されている。
研究成果は、科学ジャーナル『Energy & Environmental Science』に掲載されている。論文の責任著者Byoungwoo Kang教授は、「粒子を小さくする従来からの方法は、電池容量と充電放電時間のトレードオフだった。この研究は、高い電池容量と高速充放電を実現するリチウムイオン電池の開発の礎となるものだ」と、その成果を評価している。