グラフェンから無限の電力を引き出す、小型デバイス向けエナジーハーベスト回路を開発

米アーカンソー大学の研究チームは、グラフェンの熱運動を捉えて電流に変換できるエナジーハーベスト回路を開発した。一見、熱力学の法則に矛盾しているように思われるこの研究は、小型のデバイスやセンサー向けに、クリーンかつ無限の電力供給の可能性を示唆している。研究結果は、2020年10月2日付けの『Physical Review E』に掲載されている。

微粒子のブラウン運動からエネルギーを引き出すという考えは、熱力学の第二法則に反するとリチャード・ファインマンがラチェットモデルを使って説明する一方、1950年代にはレオン・ブリルアンが一方向のみに電流を通せるダイオードを回路に組み込むことで実現できるとして、昔から議論の的になってきた。

同大学の研究チームは3年前に、フリースタンディングのグラフェンが熱運動により波打ち、回路にAC(交流)を誘発することを発見しており、今回の成果はその理論を証明するものだ。この回路はレオン・ブリルアンの回路を拡張したもので、2つのダイオードを組み込んで、電流が双方向に流れるように設計した。ACはダイオードによってパルスDC(直流)に変換され、負荷抵抗に仕事をする。

さらに、この回路ではスイッチのように振る舞うダイオードが電力を増加させているという。この現象については、確率論的熱力学という比較的新しい分野と、100年近く前のナイキストの定理を拡張させたものを使って証明している。

研究チームによれば、熱的環境は負荷抵抗に仕事をするが、グラフェンと回路は同じ温度で、両者の間に熱の流れはない。これこそが重要だとPaul Thibado教授は語る。なぜなら、電力が発生する回路において、グラフェンと回路の間の温度差は熱力学の第二法則に反するからだ。「つまり、我々の研究は熱力学の第二法則に違反していないということだ。また、“マクスウェルの悪魔”が熱い電子と冷たい電子を分けていると議論する必要もない」としている。

チームは、比較的遅いグラフェンの動きが低周波数の電流を誘導することも発見した。これは、電子機器が低周波数でより効率的に機能することを意味するため、技術的な観点から重要となる。

研究チームの次の目標は、グラフェンから得た電流をコンデンサーに貯められるか見極めることだという。交換不要で小型の低電力バッテリーとしての利用が期待できる。

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