ロボットに痛みを自覚させ自己修復させる「小型脳」を開発

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シンガポールの南洋理工大学(NTU)の研究チームは、痛みを認識して、損傷を受けた際には自己修復させる人工知能(AI)を持つロボットシステムを開発した。研究の詳細は、『Nature Communications』誌に2020年8月12日付で公開されている。

従来のロボットは、センサーネットワークを利用して、周辺の環境に関する情報を採取している。一般的に、センサーがその場で情報を処理するのではなく、集めた情報を中央処理装置(CPU)に送り、そこで学習が行われる。そのため、既存のロボットは応答時間が遅くなり、また配線の多さから損傷の影響を受けやすいため、メンテナンスや修理が必要となる。

今回研究チームが開発したシステムは、圧力から生じる「痛み」を処理して反応するAIを埋め込んだセンサーノードを搭載しているのが特徴だ。AIは、複数の小型で低消費電力の処理ユニットに接続されており、ロボットの皮膚上に分散した「ミニ脳」のように機能する。その場で学習できるため、ロボットの応答時間が従来の5〜10倍早くなるという。

また、このシステムと自己修復性のあるイオンゲル材料を組み合わせることで、ロボットが軽い「ケガ」をしても自己修復できるとしている。人の手を介さずに、自らの損傷を感知して、切り傷を縫い合わせるように修復し、機械的な機能を回復する。損傷部分を修復している間も、ロボットの応答性は維持し続けている。

ロボットに痛みの認識と損傷刺激の学習を教えるためには、脳のように記憶と情報処理ができるMEMトランジスタを使用し、人工の痛み受容体とシナプスとして働かせている。

NTU電気電子工学部の准教授で、ニューロモーフィックコンピューティングを専門とするArindam Basu氏によると、これまでに多くのロボット工学者たちが、痛みの感知や反応などロボットに意識を持たせる方法を模索している。しかし、多数のセンサーをまとめて配置する複雑さと、その結果として生じるシステムの脆弱性が、普及のための課題となっているという。今回開発したシステムは、電子部品の数を減らし、最小限の配線と回路で情報処理ができるロボットシステムの実現可能性を実証している。

また、NTU材料科学工学部准教授のNripan Mathews氏は、「私たちは、人間の神経生物学的機能を模倣するために、これまでにないアプローチをとっています。今回の成果はこの分野の重要なフレームワークを構築し、今後の課題の道筋を示すものです」と、述べている。

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