低コストで高性能な高周波トランジスタを製造できるGaN積層構造を開発――5Gの普及に貢献 エア・ウォーター

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エア・ウォーターは2020年11月26日、新規機能材料開発プロジェクトの一環で、低コストで高性能な高周波トランジスタを製造できる基板材料の構造として、SiC on Si基板上に、厚いGaN層を成長させた新しいGaN積層構造を開発したと発表した。

高周波トランジスタは、動作時のエネルギーロスを抑えるため、トランジスタの下部を絶縁性の高い結晶材料で構成する必要がある。現状では、半絶縁SiC基板を下地基板としたGaN高周波トランジスタが実用化されてきている。しかし、基板が高価で小口径(直径100mm以下)であるため、基地局などのハイエンド用途に限定した普及にとどまっている。

そのため、直径150mmの基板で入手しやすくて廉価な高抵抗フロートゾーンSi基板を下地基板としたGaN高周波トランジスタの開発や商品化も進んでいる。しかし、基板が塑性変形しやすく製造歩留りが低かったり、トランジスタが動作中に発熱すると絶縁性能が低下しエネルギーロスが大きくなったりするなどの課題がある。

そこでエア・ウォーターは、2012年にGaN成長用下地基板として、独自技術による大口径(最大直径200mm)のSiC on Si基板を開発。2020年4月には、世界初となるSiC on Si基板を用いたパワートランジスタ用GaN基板の実用化レベルでの開発にも成功した。そして今回、これらの先行研究開発を踏まえ、新しいGaN積層構造の開発に成功した。

新しいGaN積層構造は、低価格かつ大口径で大量に普及し、強い外力を加えても塑性変形しにくいチョクラルスキーSi基板を使用。独自の成膜技術により、Si基板上に高品質のSiC薄膜を成長させている。加えてSiC薄膜上に、シンプルな窒化物緩衝層、十分に厚い(最大6µm)高抵抗GaN層、そしてトランジスタ層(AlGaN バリア層)を順に成長させている。

この構造では、コストダウンが可能であり、GaN層やSiC薄膜と、Si基板との熱膨張の差に由来する基板の塑性変形も安定して抑制できるため、製造歩留まりの低下を防げる。さらに、SiC薄膜上に十分に厚い高抵抗GaN層を成長させられ、エネルギーロスの少ないトランジスタ層を実現できる。

本構造を用いたGaN高周波トランジスタは、高抵抗GaN層が高温(100~200℃)でも常温と同様の十分な高抵抗性(絶縁性能)を維持できるため、トランジスタが発熱してもエネルギーロスは大きくならない。そして、高抵抗フロートゾーンSi基板と比較して電子の移動度が約20%改善し、高周波性能がアップした。なお、SiC薄膜は熱伝導性が高いため、トランジスタの発熱を放散する性能が原理的に改善している。

今後、エア・ウォーターは、本構造を成長させる上での下地基板となる「高周波用途向けSiC on Si 下地基板」や、本構造の成長まで同社で行う「高周波用途向けGaN on SiC on Si 基板」のパイロット生産を2020年度中に開始するとしている。

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