無音で飛行するフクロウの羽根の構造を解析――飛行機の騒音低下のヒントに

英ロンドン大学シティ校と独アーヘン工科大学の研究チームは、フクロウが静かに飛ぶ理由を、バイオミミックモデルと流体シミュレーションから明らかにした。風切羽の縁にあるぎざぎざした「セレーション(serration)」と呼ばれる構造が、流れの方向を一様に変え、乱流を発生させることなく、より長く安定した飛行をもたらしている。航空機の翼に応用することで、騒音の低減効果が期待できるもので、研究結果は、2020年11月2日付けの『Bioinspiration and Biomimetics』に掲載されている。

フクロウの仲間の多くは夜行性で、暗闇でも見える大きな目、獲物の位置を正確にとらえる耳を持ち、羽音もたてずに滑空し、鋭い爪で獲物を捕らえることができる。静かな飛行の秘密は、翼の風切羽にあり、その縁が細かく分かれているため、風を切る音を消すとされている。

ロンドン大学のChristoph Bruecker教授らのチームは、アーヘン工科大学のHermann Wagner教授らが高解像度マイクロCTスキャンで作成したフクロウの羽の3D形状データをモデル化し、数値流体力学を使ってセレーション近傍の流れを解析した。

その結果、細かく並んだ微小なとげのような構造が、境界層付近で流れの向きを変える機能を持つことを確認した。流れの方向転換効果は、とげの長さの何倍にも渡って、翼弦方向に広がっている。この効果が、後退翼に通常現れるクロススパンフローを打ち消し、流れを安定化させていた。フクロウの場合、羽ばたいたり滑空しているときに起こっている現象だ。

Bruecker教授はシミュレーション結果を裏付けるために、平面板の縁にフクロウのセレーションを模した構造を付けた翼型サンプルを作成し、流水実験を実施した。微小構造が3次元的な曲率を持ち、翼長方向に沿って規則的に配列しているため、薄いガイドベーン(案内羽根)として振る舞い、渦を発生させないことが分かった。

今後は、こうした翼の形状を技術的に可能にするために、無響風洞を使った音響試験を予定している。将来的には層流翼の設計に生かすことで、航空機の騒音を下げることが期待できる。

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Small finlets on owl feathers point the way to less aircraft noise
Flow turning effect and laminar control by the 3D curvature of leading edge serrations from owl wing

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