大面積有機半導体単結晶を用いた高感度歪みセンサーを開発――有機半導体の表面のみにドーパント分子を反応 産総研ら

産業技術総合研究所(産総研)は2020年12月21日、東京大学らと共同で、大面積有機半導体単結晶を用いた高感度歪みセンサーを開発したと発表した

今回は上記に加え、物質・材料研究機構およびパイクリスタルを加えた4者による共同開発となる。

有機半導体は、軽量性や柔軟性、印刷への適合性などを有することから、従来のシリコン半導体に代わる安価で大量生産が可能な電子材料として期待されてきた。

今回の研究グループは、独自の有機半導体材料と印刷技術によって、分子が弱い相互作用で集合した有機半導体の単結晶膜を製造する技術をすでに開発。しかし、ドーパント分子を導入することで分子の結晶性が乱されてしまうために、これまで不純物ドーピングによって安定的に電子を供給することができなかった。

今回、有機半導体単結晶薄膜をドーパント分子が溶解する溶液に浸漬するだけの簡便な方法で、有機半導体の表面のみにドーパント分子を反応させ、非破壊で高密度の不純物ドーピングに成功した(冒頭画像参照)。ドーパント分子は、有機半導体分子と酸化還元反応を起こし、有機半導体に正孔(h+)が生じる。正孔は、有機半導体一層に束縛され、二次元電子系を形成する。

この方法によって有機半導体単結晶デバイスの抵抗を精密に制御することができ、適切なドーピングを行った結果、その抵抗値を7桁以上下げることができた。元々持つ結晶性も完全に保持したままなので、単結晶性特有の巨大歪み効果も維持しており、これらの特性を生かして、外部からの応力に応答して抵抗値が変化するフレキシブル歪みセンサーを作製することに成功した。同センサーは従来の金属歪みセンサーと比較して約10倍の感度を有し、かつ繰り返し使用にも耐え得る安定性も持つ。

パイクリスタルと共同開発した歪みセンサー。厚さ7µmのフレキシブル基板に有機半導体を印刷した。歪みセンサーは、ホイートストンブリッジ回路に組み込まれ、印刷歪み量を出力電圧として検出できる。本システムで検出できる歪み量は0.005%程度である。

今後、より高性能な有機半導体材料やドーパント材料の開発によって、安価で大量生産可能な歪みセンサーデバイスの開発が促進されることが期待されるという。また、パイクリスタルは、今回の成果によって得られた技術を用いた有機半導体デバイスの事業化に向けた量産体制の確立を進める。

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