ガラスやプラスチックなどの反応容器を使用せずに化学反応を行う手法を開発――音響定在波を利用し物質を浮揚させ反応 慶應義塾大学

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慶應義塾大学は2020年12月23日、同大学理工学部の研究グループが、空気中に反応溶液を浮揚させることで、ガラスやプラスチックなどの反応容器を使用せずに化学反応や生物有機合成反応を行う手法を提案したと発表した。浮揚させた液滴内部で効率良く高分子重合や酵素反応などが行えることを初めて明らかにしたという。

持続可能な社会の構築を目指し、ストロー廃止やレジ袋有料化など、プラスチックごみ削減について世界的に意識改革の動きが進んでいる。しかし、ガラス、金属、陶器、プラスチックなどで作成された反応容器を用いる研究分野などでの取り組みはあまり進んでいなかった。また、反応容器に依存せず望みの反応を効率良く進行させるリアクターが望まれていた。

一方、音の定在波の性質と音圧を利用することで空気中や溶液中で物質を捕捉(浮揚)させる音響浮揚現象が知られており、細胞を培養液中で浮遊培養する研究を進めてきたが、空気中でこの現象を活用する化学/生命科学研究はほとんど行われていなかったという。そこで今回、浮揚させた液滴内部で効率良く高分子重合や酵素反応などが行えることを初めて明らかにした。

研究では、重力方向に沿って超音波を発生させ、振動子と反射板の間の距離を調整することで定在波を生成し、定在波の節に10μL程度の液滴を捕捉させた。浮揚させた液滴内でのアクリルアミドとN, N’-メチレンビスアクリルアミドのラジカル重合により、ポリアクリルアミドを合成してゲル化を確認したという。

次に、浮揚させた液滴内でバイオ直交反応するクリック反応を行った。銅触媒の存在下、アジドとアルキン化合物の間で付加環化反応を行うと、反応時間がプラスチック製容器内での場合と比較して数倍短縮できたという。

酵素の一つである西洋わさびペルオキシダーゼは、過酸化水素の存在下でσフェニレンジアミンと反応し、茶褐色の反応生成物を生成することが知られている。この着色によって酵素反応が進行したことが判断できる。浮揚させた液滴内で反応を行ったところ、時間とともに液滴の色が徐々に濃くなり、15分間連続的な酵素反応の進行が確認できた。また、浮揚させた液滴内での制限酵素を用いたプラスミドDNAの切断に成功した。同装置はキャビテーションがほとんど発生しない条件での利用で、さまざまな生体物質の取り扱いが期待される。

A.定在波の節に捕捉された水滴、B.浮揚された液滴中での酵素反応(着色)

現在、一度に浮かせることができる液滴の容量は少量だが、連続的に液滴を作製するシステムを組み入れることでスケールアップすることが期待できる。容器材料が反応物と接触することがないことから、タンパク質などの生体物質の変質や有効濃度が低下するリスクを抑制することもできるという。

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