- 2017-2-3
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- D2-MSN, ドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン, 北海道大学, 慶應義塾大学, 生理学研究所, 防衛医科大学校
慶應義塾大学、北海道大学、防衛医科大学校、生理学研究所は2017年2月1日、意欲障害の原因となる脳内の部位を特定したと発表した。共同研究を進めた結果、大脳基底核と呼ばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで意欲が阻害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見したという。
意欲障害は、認知症や脳血管障害などの神経疾患で見られる病態。その原因については、脳が広範囲に障害を受けたときに起こるということ以外に何も分かっていなかった。そのため現時点では、脳損傷による意欲障害に対してどの薬が有効・無効かが全く分からず、候補薬さえも挙げられない。
研究グループは今回、脳の特定部位である線条体を構成する一つの細胞集団「ドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン(D2-MSN)」に着目。実験用マウスのD2-MSNだけに神経毒を発現させて徐々に細胞死させるという研究を実施し、D2-MSNの細胞死がマウスの意欲レベルを下げるかどうかを調べた。その結果、線条体の腹外側のわずか17%の細胞死によって意欲障害が起きることが明らかになった。
さらに研究グループは、オプトジェネティクスによるD2-MSNの機能抑制と、オプトジェネティクスによるD2-MSNの破壊という2つの手法を用いた実験も実施。これにより、腹外側線条体のD2-MSNが意欲行動に必須であることを見出した。
研究グループは今回の実験によって、脳損傷による意欲障害のモデル動物を樹立した。このモデル動物を用いれば、意欲障害を改善する薬剤の探索が可能になるとしている。