米陸軍がUberらと電動VTOLの低ノイズ化を研究――偵察活動や物資輸送に応用

米陸軍の戦闘能力開発コマンド(DEVCOM)陸軍研究所は、Uberとテキサス大学オースティン校と共同で、eVTOL(電動垂直離着陸機)の騒音を低減するローター設計について、実験とシミュレーターを使った音響特性から明らかにした。研究結果は、Vertical Flight Societyの『第76回年次フォーラム議事録』に掲載されている。

分散型電気推進を利用したeVTOLは、次世代の航空機として、空中での監視や物資の輸送といった軍の重要任務を担うと期待されている。機体の静音化は設計の優先事項だが、小型のローターを持つeVTOLは、従来のヘリコプターとは異なる物理メカニズムで騒音を発することが予想される。「航空機設計者が実際にどのような音が聞こえるか把握できるよう、発生するノイズ全てを考慮しながら従来のモデリング手法を改良する必要がある」と、陸軍研究所のエンジニアであるGeorge Jacobellis氏は語る。

今回研究チームは、eVTOLではローターが小型化するにつれて、乱流によって引き起こされるブロードバンドノイズが一般的なヘリコプターから発生するトーンノイズよりも支配的になるという仮説を立て、実験とシミュレーションで検証した。

実験では半径約1mの2つの電動ローターをテストスタンドに設置し、ローターハブを取り巻くように9本のマイクを配置した。最大回転数1200RPM、最大先端速度マッハ0.41でローターを回転させて、発生するノイズを記録した。

シミュレーションでは、「RCAS(回転翼機総合解析システム)」と「PSU-WOPWOP」プログラムを利用している。これらを使うことで、ブレードにかかる空力負荷やブレードの曲がりやひずみ、ローターで発生するノイズが計算できる。また、実験データに基づき広帯域ノイズモデルを作成した。実験結果とノイズモデルからの予測には、乖離している部分もあったが、研究チームは既に別のシミュレーション手法に着目しており、今後はより高精度の音響予測ができると考えている。

さらに、今回の結果からは、同軸上にローターブレードを等間隔に配置した「スタックローター」構造が最も静音で、従来のローターと同等の騒音レベルだと分かった。より静音のスタックローター構成を追求するため、軸上間隔を変えながら実験を続けるとしている。

「スタックローターはeVTOLアプリケーションに有益だ」とJacobellis氏は考えており、「設計の自由度が増したことで、効率の向上と音響特性の制御が可能になることを結果が示している。 ただし、軸方向の間隔によるノイズ削減効果を定量化するには、さらなる調査が必要だ」と語っている。

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Army researchers look to reduce rotorcraft noise

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