金属3Dプリンティングで問題となる空孔の発生過程を解明――不安定なキーホールの「崩壊」が原因

Source: Tony Rollett

米カーネギーメロン大学は、金属積層造形(AM)において完成部品に弱い箇所を作ってしまう小さな気泡が、どのようにして形成され、凝固した金属内に閉じ込められるのかを明らかにした。この成果によって、いずれこの問題を回避するよう機器を正確に制御できるようになるとしている。研究結果は、2020年11月27日付で『Science』に掲載された。

粉末床溶融結合(PBF)法は、代表的な金属3Dプリンティング技術だ。しかし、積層造形中に金属粉末が溶融したメルトプール内に蒸気で満たされた細く深いくぼみ(キーホール)が形成されることがあり、キーホールの底の部分で空孔が生じ残留する。その結果、合金の性能、特に破壊特性が低下することが金属3Dプリンティングにとって大きな課題となっていた。

キーホール現象は、低速高出力レーザーで金属粉末を溶融する場合に発生する。研究チームは、先行研究でキーホール現象を定量化していたが、今回の研究では、先行研究に基づきキーホール形成がチタン合金のポロシティ(気孔率)にどのように関連するかを詳細に調べた。アメリカ国内で唯一このような実験を実施できるアルゴンヌ国立研究所のシンクロトロンX線装置を使用し、実験では高速X線イメージングを用いてキーホールの不安定性を観察した。

その結果、キーホールに何が起こっているかが初めて判明した。造形中に細く深いキーホールが形成されると、キーホール内部の壁面が強く振動する。キーホールの底の先端部分をJ字型に変形させてしまうほど振動が強くなることがあり、その結果、先端部分がちぎれるように離れて気泡が生じる。こうして生じた気泡は元のキーホールに再接合しないことがある。このキーホールの崩壊といえる不安定な挙動により、液体金属内で音響衝撃波が発生し、衝撃波が気泡を元のキーホールから遠ざける。その結果、気泡は再凝固する金属内部に閉じ込められてしまう。

キーホール自体は欠点ではなく、レーザーの効率を高めるものだ。研究チームは、安定したキーホールと不安定なキーホールとの間には明確な境界があることに気づいた。不安定な状態でスキャン速度とレーザー出力が低下するほど、キーホールの最も深い部分での振動はより強くなる。この場合の境界は、速度が低下するほど欠陥が発生しやすくなり、境界の速度を下回っている場合はほぼ確実に欠陥が発生する。逆に、低速高温という危険領域を避けていれば、欠陥が生じるリスクは非常に小さくなるという。

研究チームは、規模を拡大して、キーホールによる空孔発生に明確な境界が存在することを証明し再現実証することで、造形プロセスを予測改善するためのより確実な根拠を提示できるとしている。

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