- 2021-2-22
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- 2電子還元反応, 4電子還元, Science, Wei Sun, Zn-O2/過酸化亜鉛(ZnO2), ミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学), リチウムイオン電池, 亜鉛(Zn), 充電式電池, 学術, 空気亜鉛電池, 酸素(O2)
ドイツのミュンスター大学(ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学)を中心とする国際研究チームは、空気亜鉛電池を二次電池化できる技術を開発した。正極に空気、負極に亜鉛(Zn)を利用する空気亜鉛電池は、安全、安価、軽量というメリットがある一方で、充電式電池としての利用には適さないとされている。今回、研究チームは、疎水性の非アルカリ性電解質を用いることで、この問題を克服する技術を開発した。研究成果は、『Science』誌に2020年1月1日付で公開されている。
従来の空気亜鉛電池は、電解質としてアルカリ水溶液を使用し、酸素(O2)を4電子還元する。4電子還元の反応速度の遅さや、腐食性のある電解質や大気中の二酸化炭素による寄生反応が原因で、空気亜鉛電池は充電式に向いていなかった。
今回研究チームは、新たに開発したトリフルオロメタンスルホン酸塩をベースとする疎水性の非アルカリ性電解質を用いている。非アルカリ性電解質中では、2電子還元反応を経てZn-O2/過酸化亜鉛(ZnO2)の反応が進む。この酸化還元反応は、従来の手法と比べて可逆性がはるかに高いため、充電可能な空気亜鉛電池が実現した。疎水性電解質を用いることで、正極表面から水を排除し、4電子還元を防いでいる。
開発した空気亜鉛電池は、320サイクルの充放電と1600時間の長期使用が可能であった。
論文の筆頭著者であるミュンスター大学のWei Sun博士は、「実用化までにはさらなる研究と最適化が必要だが、環境への配慮、高い安全性、低コストの面から、空気亜鉛電池は、現在市場を席巻しているリチウムイオン電池のライバルになり得えるだろう」と、述べている。