世界最速のニューロモーフィックプロセッサーを開発

オーストラリアのスウィンバーン工科大学を中心とする国際研究チームは、毎秒10兆回(OPS/秒)以上の演算ができ、超大規模データの処理を可能とするAI用の世界最速かつ最も強力な光ニューロモーフィックプロセッサーを実証した。研究の詳細は、『Nature』誌に2021年1月6日付けで公開されている。

脳の神経回路を模倣した人工ニューラルネットワークはAIの要となる技術であり、コンピュータービジョン、自然言語処理、顔認識、音声認識、医療診断をはじめとする幅広い分野で応用されている。畳み込みニューラルネットワークは、人工知能技術の革新において中心的な役割を果たしてきたが、これまでのシリコン技術は処理速度とエネルギー効率の面でボトルネックになることが増えてきている。

研究チームは、光マイクロコム(micro-comb)を利用したニューロモーフィックプロセッサーが、従来のプロセッサーの100倍以上の速度で動作することを実証した。また、このプロセッサーを使って、10個の出力ニューロンをもつ光畳み込みニューラルネットワークを形成したところ、88%の精度で手書きのデジタル画像を認識できた。

100テラOPS/秒を超える動作が可能なGoogleTPUのような最先端の電子プロセッサーは、数万個の並列プロセッサーで行われる。一方、今回実証したシステムでは、単一の光プロセッサーを使用しており、光マイクロコムを介して、時間、波長、空間次元のデータを同時にインターリーブするという新しい技術を用いている。

マイクロコムは、シングルチップ上に数百個の高品質赤外線レーザーを搭載したデバイスで、高速、小型、軽量、低コストという特徴がある。2020年5月には、光マイクロコムを利用して、当時の世界最速インターネットデータ通信を記録している。

今回の研究をリードした一人であるスウィンバーン工科大学のDavid Moss教授は、「私がマイクロコムを共同発明してから10年が経過し、集積化されたマイクロコムチップは非常に重要なものとなりました。情報通信と情報処理の飛躍的な進歩を目の当たりにして興奮しています。マイクロコムは、世界の情報技術に関するニーズを満たす可能性を秘めています」と述べている。

関連リンク

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る