完璧な砂の城を作る科学をついに解明――ケルビンの理論はナノスケールにおいても正しかった

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英マンチェスター大学が2020年12月9日、原子レベルで閉じ込められた環境下での毛管凝縮現象がケルビン方程式に従うことを証明したと発表した。毛管凝縮の現象は摩擦や粘着や潤滑、腐食といった身近な現象に影響を与えるものだ。研究成果は学術論文『Nature』において同日発表されている。

砂の城をつくる際、適度に水で湿らすとつくりやすいのは誰しもなじみの経験だろう。毛管凝縮は観察可能な教科書的な現象で、隣接する表面間の微小な空間で水の分子層が凝縮するような現象をいう。これまで、毛管凝縮は1871年にケルビンが説いたマクロ的現象としての理解にとどまっていた。そのため、ミクロスケールにおいては、科学的裏付けなしでケルビン方程式を応用している状態であった。証明がないながらも、ミクロスケールでもそれなりにケルビン方程式によって毛管凝縮はうまく説明されてきたのだ。そもそもケルビン方程式は、人間の目に見えるミリサイズの管の中で見られる水のメニスカス(界面張力によって細管内の液体の表面がつくる凸状または凹状の曲面)の観察に基づいたものだ。

今回、2000年にノーベル物理学賞を受賞したAndre Geim氏が率いる研究グループは、通常の環境下で水が蒸発するのに十分なサイズの小さな人工毛細血管を作製し、毛管凝縮現象の物理を解き明かすことに成功した。

研究者らは高さが4オングストローム以下で、水の単層を保持する原子サイズの人工毛細血管を利用して、ミクロスケールで起きている毛管凝縮現象を科学的に検証した。具体的には、マイカとグラファイトの原子レベルの結晶をグラフェンの細長い結晶の上下に重ねた三層構造を作製。グラフェンがスペーサーの役割を果たし、さまざまな高さの毛管を作ることができるという。

その結果、最小の毛管でも、定性的に毛管凝縮現象がケルビン方程式で記述できることを示した。原子レベルスケールでは水は性質を変化させ、水の構造は離散的かつ層状になることから、研究者らはケルビン方程式には従わず、従来の物理学は崩壊すると予測していたという。

研究者らは新しい物理の発見にも期待を寄せていたようだが、ケルビン方程式がミクロスケールでもうまく機能することが判明したことに驚いたという。「数多くの凝縮効果や関連する性質について、『これまでケルビン方程式はうまく毛管凝縮現象を説明しているのでミクロスケールでも使ってもいいだろう』という勘によるものではなく、確たる証拠を得てケルビン方程式を利用することができるので安心している」と筆頭著者のQian Yang氏は語っている。

関連リンク

How the ‘science of sandcastles’ proves Lord Kelvin right, 150 years on
Capillary condensation under atomic-scale confinement

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