ITOフリーの有機ECデバイスを開発――Ag–Auコアシェルナノワイヤを用いたアプローチで実現

ITO(酸化インジウムスズ)を全く含まないフレキシブル有機エレクトロクロミック(EC)デバイスが開発された。Ag–Auナノワイヤベースの透明導電性電極を用いた新しいアプローチによる成果だという。研究成果は、カナダのケベック大学州立科学研究所(INRS)によるもので、2021年1月27日付で『Advanced Functional Materials』に掲載されている。

スマートウィンドウ、ウェアラブル端末、折り畳み式ディスプレイ、スマートフォンなどに使われるECデバイスは、電圧を加えることで材料の色や不透明度が変化する。従来、ECデバイスはITOを使用していたが、金属酸化物は柔軟性に欠けており、液漏れの問題もあった。ITOの主成分であるインジウムは、その希少性から資源枯渇、価格高騰といったリスクがあり、持続可能性も懸念されている。また、最高品質のITOを用いた電極製造プロセスはコストがかかる。そのため、代替素材の開発やITOフリーの光電子デバイスが求められている。

そこで研究チームは、ITOフリーの新しいフレキシブル有機ECデバイスを開発した。具体的には、Ag–Auコアシェルナノワイヤネットワーク、ECポリマー、LiBF4/プロピレンカーボネート/ポリ(メタクリル酸メチル)を電極、活性層、固体電解質としてそれぞれ使用。共役ECポリマーと統合されたAg–Auコアシェルナノワイヤ電極は、Auシェルによるカプセル化により、H2O2の酸化溶液のような過酷な環境下でも優れた安定性と柔軟性を示した。また、可視領域と近赤外領域で可逆的に透過率が変化するなど、高い性能を確認できた。

この手法は、費用対効果が高く、電極形成が容易だという利点がある。今回、研究チームは概念実証に成功したため、今後は透明電極の合成のスケールアップを図る。そして、高いデバイス性能を維持しながら、ナノワイヤ製造プロセスをさらに費用対効果の高いものへと改善していく計画だ。

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