- 2021-5-17
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- MOST(Mlecular Solar Thermal Energy Storage), チャルマース工科大学, 再生可能エネルギー, 化石燃料, 太陽光発電, 太陽熱燃料(solar thermal fuel), 学術
太陽光発電は、化石燃料に代わり、持続可能な社会を支える再生可能エネルギーの一つとして期待されている。しかし、太陽が出ていないときでも電力を使用するには、太陽エネルギーを長期貯蔵しなければならないという課題がある。
スウェーデンのチャルマース工科大学の研究グループは、太陽エネルギーを貯蔵して後から利用するMOST(Mlecular Solar Thermal Energy Storage)と名付けた太陽エネルギーシステムの開発を進めている。
2018年、研究グループは太陽エネルギーを蓄えることができる液体「太陽熱燃料(solar thermal fuel)」を開発した。MOSTにおいて太陽熱燃料を透明チューブ中で循環させることでエネルギーを蓄積し、最長18年間貯蔵できると報告されている。
太陽熱燃料は炭素、水素、窒素からなる分子で、太陽光を浴びると原子間の結合が再編成し、太陽エネルギーを化学結合の間に取り込む異性体に変化する。太陽熱燃料は、室温まで冷えてもエネルギーを閉じ込めたままだ。エネルギーを取り出したいときは、研究グループが開発した触媒とともに63℃まで温度を上げると、元の異性体へと戻り、熱として放出される。エネルギーを取り出した太陽熱燃料は、MOSTに戻し再利用できる。これまでに、125回再利用しても分子構造に大きな影響がないことが確認されている。研究チームの計算によると、太陽熱燃料は1kgあたり最大250Whのエネルギーを蓄えることができるという。
すでに、プロジェクトによるMOST開発は進んでおり、暑い日に室内の温度を均一にする窓用フィルムに応用されている。研究グループは、太陽熱燃料を利用する技術は、10年以内に商業的に利用可能になると考えている。
2020年後半から、チャルマース工科大学の研究グループを中心に、MOSTの大規模応用に向けたEUプロジェクトが始まっており、プロジェクトの期間は3年半で、EUから430万ユーロ(約5.6億円)の資金を得ている。