使用するたび効率が高くなる人工光合成デバイスの仕組みを解明

Image credit: Berkeley Lab

光と水を使って炭素を含まない水素燃料を作り出す人工光合成の技術は、無限の可能性を秘めている。ローレンス・バークレー国立研究所を中心とする研究チームは、安価で豊富に存在する材料を用いて作られた水分解装置の効率が、使うたびに上がる理由を明らかにした。メカニズムが解明されたことで、光と水から水素燃料を製造する技術の実用化が飛躍的に進む可能性があるという。研究成果は、『Nature Materials』誌に2021年4月1日付で公開されている。

この水分解装置は、ミシガン大学のZetian Mi教授らが3年前に発明したものだ。一般的な電子機器に用いられているシリコンと窒化ガリウムでできた半導体を材料とし、効率と安定性が従来技術に比べて2倍優れている。人工光合成装置の多くは、数時間使用すると効率が大幅に低下する。ところが、Mi教授のチームが開発した水分解装置は、使用するたびに自由電子がより多く生成し、水分解に自由電子を利用する能力も向上することが分かった。

今回、研究チームは、ローレンス・リバモア国立研究所の助けも借りて、この材料の自己改善という優れた性質が、窒化ガリウムに由来することを明らかにした。走査型透過電子顕微鏡と角度依存X線光子分光法を用いた分析の結果、窒化ガリウム粒子の側壁で部分的な窒素の酸素置換が起こり、ナノメートル単位の酸窒化ガリウム層が生じ、その結果、水素発生反応の触媒密度が高くなることを発見した。

窒化ガリウムから酸窒化ガリウムへの化学変化により、持続的な動作と触媒活性の向上が見込めることから、酸窒化物が水素発生用の保護触媒コーティングとして有望であることが示された。今後はこの新発見を利用して、より効率的な人工光合成デバイスを低コストで設計/製造したいと研究チームは述べている。

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