- 2021-6-29
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- LD, NEDO, パルスレーザー装置, レーザー増幅器, レーザー媒質, 半導体レーザー, 新エネルギー・産業技術総合開発機構, 浜松ホトニクス, 研究
浜松ホトニクスは2021年6月28日、半導体レーザー(LD)励起では世界最高のパルスエネルギーとなる出力250Jの産業用パルスレーザー装置を開発したと発表した。
今回の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトで進めてきたものだ。
加工用レーザーは従来、一定の強さのレーザー光を連続出力するCWレーザー方式が主流だった。一方レーザー光を短い時間間隔で繰り返し出力するパルスレーザーは、高強度のLDや大型のレーザー媒質がなかったことで高出力のレーザー装置が開発できず、実用化が進んでいなかった。
同社では同プロジェクトにおいて、2019年に同社製LDモジュール4台と、セラミックスのレーザー媒質6枚と搭載したレーザー増幅器2台によって、117Jのパルスエネルギーを出力する産業用パルスレーザーを開発した。
今回、レーザー媒質として世界最大面積のセラミックス10枚を搭載することで、光エネルギーの蓄積能力を従来の約2倍に向上。また、新たに開発したLDモジュール8台の照射角度、位置を工夫して搭載し、レーザー媒質を励起する効率を向上させることで励起能力を従来の約2倍にまで高めた。さらに、同社独自の高出力レーザー技術によって装置全体の光学設計を最適化。集光性や照射面に対する出力分布の均一性などビームの品質も向上させた。
これらによって従来の産業用パルスレーザー装置と同程度のサイズを保ちながら、エネルギーの増幅能力を2倍以上の250Jを実現。同社によると世界最高のパルスエネルギーを出力する産業用パルスレーザー装置になる。本装置の主な仕様は、最大パルスエネルギー:250J、パルス幅:30ns(可変)、波長:1030nmである。
今後は、同プロジェクトにおいてTACMIコンソーシアムと連携して、今回開発した装置を用いたレーザー加工実験および加工時のデータを集約したデータベースの構築を進める。これにより加工条件の最適化が可能になり、レーザー加工の効率化だけでなく、医療/エネルギー分野での応用開発も期待できるようになる。また同社では、1kJ級の産業用パルスレーザー装置実現のための研究にも取り組む。