静岡大学は2021年6月30日、同大学、東京電機大学、ヤマハ発動機の共同研究グループが,加熱することなくチタン合金表面に硬質な窒化層を短時間で形成させることに成功したと発表した。処理時間が30秒ほどに短縮され、加熱によるチタン合金組織の粗大化も防ぐことができたという。
軽くて強くて錆びないチタン合金は構造材料として実用されているが、摩擦摩耗特性に乏しいという欠点があり、チタン合金の適用範囲拡大にはこの欠点を克服する必要があった。
現在は窒素拡散を利用した表面硬化法が広く用いられているが、チタン合金を長時間加熱する必要があり、チタン組織の粗大化を引き起こし強度が低下するため、加熱を必要としない短時間表面硬化プロセスの開発が求められていた。
研究では、常温/大気環境で窒素含有微粒子を高速投射するプロセスにより、チタン合金の表面に窒素含有微粒子の一部が付着し、短時間でチタン合金表面に硬い窒化層が形成されることを明らかにしたという。処理時間は従来手法と比べ大幅に短縮されており、30秒ほどになっている。
さらに、チタン合金の表面組織が窒素含有微粒子の衝突時に改質されることもわかった。これまでの手法ではチタン合金組織が加熱により粗大化したが、今回の研究ではチタン合金の表面組織を微細化させることにも成功している。
研究成果は、優れた摩擦摩耗特性と強度特性を併せ持つ多機能チタン合金の開発につながると考えられ、航空機、自動車、生体医療分野などへの応用展開が期待される。