金属3Dプリント製の歩道橋が開通――センサー内蔵で橋の状態を常時モニター可能

オランダのアムステルダムの運河に、金属3Dプリント製の歩道橋が架けられた。2021年7月15日に開通したこの橋の長さは12mで、素材はステンレス鋼だ。橋には膨大なセンサーネットワークが組み込まれており、歩行者の往来が橋に与える影響を測定、監視、解析する「リビングラボ」としても使われる。記念セレモニーにはマキシマ王妃も出席した。

設計と製造に携わったのは、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)、アラン・チューリング研究所、そして3Dプリント企業のMX3Dらだ。「歩行者の通行に耐えられるほど十分大きく頑丈な3Dプリント製の金属構造は、これまで建設されたことがない」と、ICLのLeroy Gardner教授は語る。

橋のセンサーが集めた環境データや振動データなどは、リアルタイムで評価され、仮想的な「デジタルツイン」に入力される。橋の「健康状態」が年々どのように変化するか、人々と3Dプリント製のインフラがどのように相互作用するのかを理解し、将来の建設プロジェクトの参考にもなるとしている。

3Dプリント製の金属構造物に関する取り決めがない場合、安全性を保証するには、物理的試験やコンピューターシミュレーションが重要だ。研究チームは、3Dプリント部品の引張試験、デジタルツイン上のシミュレーション、歩道橋の非破壊試験、センサーネットワークの作製など、仮想空間から現実空間、スモールスケールからラージスケールまで、4年以上に渡り開発を続けてきた。

3Dプリントとデジタルツインを組み合わせることで、環境への影響、構造上の自由、製造コストを考慮したインフラを迅速に開発できる。最終的なデザインに沿って、MX3Dは先端に特殊なツールの付いた4本のロボットアームを使用し、6カ月かけて4500kgのステンレス鋼を、複雑かつ美しい構造を持った橋梁に3Dプリントした。

Gardner教授は「3Dプリントは建設業界に対して莫大な機会を与え、材料の特性や形状へ大きな自由度をもたらす。この自由度は同時に多くの課題を生み、構造エンジニアは新しい方法を考えることになるだろう」と語る。

アラン・チューリング研究所のMark Girolami教授も「3Dプリントはエンジニアリングにおいて主要な技術になろうとしており、その可能性を最大限に引き出すにはテストやモニタリングのための最適な手法を開発する必要がある」と語り、橋から得られるデータは、共同研究を希望すれば他の研究者らも利用できるとしている。

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