群れで決定し行動する――小型気象衛星群への「ハイブマインド」実装をNASAが検討中

Credits: NASA/SDL/Jose Vanderlei Martins

「ハイブマインド(集合精神)」とは、集団を構成する個体が同じ思考を共有し、個々の思考は失われた状態を指す、サイエンスフィクション的概念だ。ところがNASAのエンジニアは、気象観測用の小型衛星群にハイブマインドを実装するためのソフトウェアを開発中だ。

アマゾンの熱帯雨林に吹くサハラ砂漠の砂は、大西洋上の雲の形成に影響を与えていることが知られている。大気中の微小粒子と雲の相互作用についての理解は、気候変動を考えるうえで大切だ。現在、さまざまな地球観測衛星が軌道上に投入されている。HARP(Hyper-Angular Rainbow Polarimeter)衛星もその1つで、エアロゾルと雲を観測している。HARPのような小型衛星(SmallSat)に、群れで連携して行動する機能を与えることで、天気予報、災害報告、長期的な天候モデルの精度を大幅に向上できる可能性がある。

NASAゴダード宇宙飛行センターのエンジニアであるSabrina Thompson氏は、小型衛星群が互いに通信し、雲など観測ターゲットを識別して、同一ターゲットを別々の視点から観測するために、高度とタイミングを合わせられるようなソフトウェアを開発している。まずは人が観測要件と重要度の高いターゲットを決め、次にソフトウェアが衛星群の相対的な動きを算出して、ターゲットを最も効果的に観測できるようにする。観測プランは、時刻、季節、観測地域によって変わるかもしれない。機械学習アルゴリズムを組み込んでいるので、観測が進むにつれてプランを見直すこともできる。

衛星群のフォーメーションもいくつか検討しているという。別々の軌道上から角度の異なるデータを取得したり、似た様な角度から観測時刻の異なるデータを取得したり、さらに、同一軌道上を間隔をあけて飛行する衛星群と、異なる軌道を飛行する衛星群を組み合わせることも想定している。これにより、雲を真上からだけでなく横からも観測でき、雲の一生を追うこともできる。

また、視野角や解像度の異なるデータを取得することも可能だ。広視野の小型衛星1機だけでは画像の精度が足りない場合でも、群れで行動すれば、1機は観測領域を決定するための測量衛星、残りを狭視野、高精度観測用として使うことができる。

刻々と変化する自然現象に素早く対応するには、地上と交信している時間はない。衛星たち自身が決断し、情報共有できることが重要だ。地上管制と通信ネットワークへの依存が減れば、小型衛星の限られた資産も有効に活用できるとThompson氏は語る。

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NASA Works to Give Satellite Swarms a Hive Mind

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