樹脂とは?プラスチックと違うの? その特性を解説

樹脂やプラスチックを使った製品は、一般家庭にも普及していますが、樹脂とプラスチックの違いを正確に理解している人は少ないようです。それでは製品を選んだり、使用する時に適切な判断ができません。樹脂とプラスチックの違い、樹脂やプラスチックの種類/特性などを、正しく理解しておくようにしましょう。

1.樹脂とは?プラスチックとは違うの?

樹脂とは、元々は松脂や漆のように樹木の樹液が固まった物質を指します。経済や産業の発展と共に樹脂の需要が増大していきますが、こうした樹液は採取量が少ない上に高価なものとなるため、人工的に樹脂が作れないかと試行錯誤が繰り返されました。化学技術が発達した結果、石油や石炭などの化石資源を原料にした人工的な樹脂が量産されるようになり、今ではさまざまな製品を作る材料となっています。合成樹脂が普及したことによって、樹脂が飛躍的に普及することになったのです。

人工的な樹脂を「合成樹脂」と呼ぶのに対して、樹木の樹液を材料とするものは「天然樹脂」と呼ばれます。日本では、樹脂は樹液を材料とするものという認識が一般的ですが、海外では動物や鉱物に由来するものも天然樹脂に分類されることに注意しましょう。

そして、合成樹脂の中でも一番有名なのが、プラスチックです。樹脂や合成樹脂という名称よりも、プラスチックという名称の方が、耳にする機会は多いでしょう。中には樹脂とプラスチックの違いを理解していない人も少なくないようですが、プラスチックは合成樹脂のグループに入る熱可塑性樹脂に分類されるものです。樹脂とプラスチックについては、JISで明確に定義されていて、樹脂は原料、プラスチックは成型品となっています。

樹脂とはどのようなものかを理解し、プラスチックとの違いもきちんと把握しておきましょう。

2.「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の特性

石油などから作られる合成樹脂は、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分類できます。
熱可塑性樹脂は加熱すると軟らかくなり、熱硬化性樹脂は加熱すると硬化するのが特徴です。

熱可塑性樹脂は加熱すると一時的に軟らかくなりますが、冷却すると硬くなります。分子の形状が線状であるために、何度加熱と冷却を繰り返してもこの特性は維持されます。一度加熱して製品となったものでも、また加熱すれば好きな形状に成型することが可能です。一度使ったものをリサイクルできるという面でも注目されています。このように、加工がしやすいので、現在流通している合成樹脂はほとんどが熱可塑性樹脂です。プラスチックという言葉自体が可塑性物質を意味していて、汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックとして普及しています。

熱硬化性樹脂は、加熱すると硬化するという特性を持っていますが、3次元や網状の構造に変化してしまうために、一度硬化すると二度と軟化することはありません。そのため、熱可塑性樹脂のように加工しやすくはありませんが、耐熱/耐薬品/接着性に優れているため、塗料や接着剤、生産現場で使う治具などに用いられています。代表的な熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂があります。熱硬化性樹脂同士は、相溶性や混和性がよいため、複数の樹脂を同時に使うこともよくあります。

プラスチックという名称が使われるかどうかで、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を区別することもできます。

3.「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック」の特性

熱可塑性樹脂である汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチックは、次のような特性を持っています。

汎用プラスチックは、耐熱性や耐候性が高くないため、おおよそ100℃前後で溶融しはじめます。機械的強度が要求される所には利用できませんが、加工やリサイクルがしやすいというメリットがあります。雑貨や家庭用品などに用いられるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は、汎用プラスチックのグループに入ります。加工しやすく価格も安いために、生産されるプラスチックの8割が、汎用プラスチックだとされています。

エンジニアリングプラスチックは、100℃以上で連続使用可能で、機械的強度/耐熱性/耐摩耗性が高いことが特徴です。信頼性が求められる機械材料として使用されることもあります。しかし、成形温度も高くなるために加工が難しく、汎用プラスチックよりも価格が高いという面があります。代表的なエンジニアリングプラスチックは、ポリカーボネート(PC)やポリアミド(PA)などです。業界では、エンジニアリングプラスチックを略して「エンプラ」と呼んでいます。

さらに、エンジニアリングプラスチックは、耐熱温度が100℃以上の汎用エンジニアリングプラスチックと、耐熱温度が150℃以上のスーパーエンジニアリングプラスチックに分類できます。機械的強度や耐溶剤性も、スーパーエンジニアリングプラスチックの方が高くなります。代表的なスーパーエンジニアリングプラスチックには、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や液晶ポリマー(LCP)などがあります。

4.まとめ

樹脂は、これからも産業や生活に欠かせないものとして使われていくでしょう。特に新しい可能性を秘めたエンジニアリングプラスチックを活用すれば、今までにないような製品を生み出すことも可能です。樹脂に関する理解を深めれば、リサイクルできるものも増えて、生活が便利になるだけではなく、環境によい社会を実現することにも役立ちます。身近なものであるだけに、何気なく使ってしまいがちですが、樹脂のことをよく把握して、十分に特性を活かすようにしましょう。

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