海洋ゴミ問題の解決に向けて――回収した廃プラスチックを船上で燃料に変換する技術

世界中で年間115〜241万トンものプラスチックが川から海に流れ込んでいると推定されており、海洋プラスチックゴミ問題は地球規模で大きな問題となっている。オートメーション機器や航空機部品を製造しているHoneywellは、これらの廃プラスチックをリサイクルプラスチック製造のための原料に変換することを考えている。

「UpCycleプロセス技術」と名付けたHoneywellの新技術は、これまでリサイクルできなかった着色プラスチックフィルム材やポリスチレンなども変換可能だ。同社によると、化石燃料から新たにプラスチックを製造する場合と比べてCO2排出量が57%削減、従来の廃プラスチック処理法と比較してもCO2排出量が77%削減できるとしている。

スペインのインフラ企業であるSacyrはHoneywellと共同で、UpCycleプロセス技術を採用した最初のプラントの建設を計画している。2023年の生産開始を予定しており、年間3万トンの廃プラスチックをリサイクル用の原料に変換することが可能だ。このプラントはモジュール工法を採用しているため、導入や設置が簡単で、設置する地域の廃プラスチック量や経済力に対応できる。

UpCycleプロセス技術以外にも、プラスチックをリサイクルする新技術は提案されている。2021年11月16日付の『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』では、海洋の廃プラスチックを高温/高圧下で解重合する水熱液化(HTL)を利用した船上での燃料への変換の実現性について、ハーバード大学などからなる研究チームが検討している。

その結果、確率論的エネルギー分析により、海洋プラスチック廃棄物のHTLは、船の走行とリサイクルをするための動力に必要なエネルギーを供給できる可能性があることが示された。船上で廃プラスチックを燃料に再生できれば、船舶は燃料補給のために寄港する必要がない。このシナリオでは、太平洋ゴミベルトと呼ばれる大量の浮遊ゴミが存在する地帯で年間230〜1150トンの廃プラスチックを利用することを想定している。

こうした高度な技術の発展により、今後リサイクルできる廃プラスチックの量は増えていく可能性があるといえるだろう。

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