エコで従来比60%軽量なEVバッテリー筐体――製造過程の二酸化炭素排出15%削減を目指す

© Fraunhofer IWU/AES

ドイツのフラウンホーファー研究機構は2024年9月2日、電気自動車(EV)用バッテリー筐体の製造過程で排出される二酸化炭素を削減する技術を発表した。軽量化によってEVの電力消費が減り、航続距離が長くなるのも利点となる。

今回の成果は「COOLBat共同研究プロジェクト」によるものだ。15のプロジェクトパートナー機関や企業が、バッテリー筐体の軽量化のための構造原理や材料、生産方法を研究し、筐体製造時に排出される二酸化炭素を15%削減することを目指している。

軽量化にあたっては多様なアプローチを用いた。筐体内の個々のシステムを組み合わせる試みとしては、例えば、冷却チャネルをクロスビームなどの荷重支持構造に直接組み込んだり、冷却ユニット機能とアンダーライド防止装置をベースプレートに統合し、設置スペースを縮小したりした。このベースプレート内のアルミニウム発泡体が石の衝突や事故の衝撃エネルギーを吸収する上に、特殊なワックスである相変化材料(PCM)と組み合わせることで冷却効果も発揮するという仕組みだ。

さらに、バッテリーから外装への放熱のために使われる、重くて持続不可能な導電性ペーストを、環境に優しい熱伝導性材料に置き換えた。再利用可能な開孔性の発泡体をプラズマ処理によって金属でコーティングし、緩衝材としてバッテリーと筐体の間のスペースに配置した。

筐体の蓋にはカーボンと樹脂からなる繊維複合材料を採用した。これにより従来のスチール製のものと比べて質量を60%削減し、蓋の再利用も可能になった。また、新しいバイオベースの難燃性コーティングを筐体の蓋の裏面に塗布することで、下にあるバッテリーセルからの延焼も防ぐ。

今後、このプロジェクトのさまざまな成果を、列車、航空機、船舶など、大型バッテリーが使用される他の用途や産業にも拡大する予定だ。冷却システムは食品や医薬品の輸送で、防火手法はビルなどの建造物で使用される可能性があるとしている。

関連情報

EV Battery Enclosures with Lower Carbon Emissions

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