東京工業大学は2021年12月17日、同大学の研究グループがCO2の電気分解を利用した蓄電と、炭素と空気を用いた化学反応による発電を組み合わせた固体酸化物型の大容量蓄電システムを世界で初めて開発したと発表した。CO2の電気分解による蓄電と、炭素と酸素を用いて発電する研究の成果は、これまでも個別に報告されていたが、両者を組み合わせたシステムの開発は今回が初めてで、「カーボン空気二次電池(CASB)システム」と名付けた。研究成果は11月5日付「Journal of Power Sources」オンライン版に掲載された。
開発されたCASBシステムの理論放電効率は100%で、水素ガスを用いた既存のシステムよりも高い理論体積エネルギー密度1625 Wh/Lを有する。蓄電システムの出力と蓄電容量もそれぞれ別に制御できることから、再生可能エネルギーの大規模利用において必要となる次世代大容量蓄電システムとして期待できる。
研究グループによると、CO2は液体状態で貯蔵しておき、充電時に気化して使用する。システム内に送られたCO2は、固体酸化物燃料電池(SOEC)に投入した電力によって炭素に電気分解され、その炭素はSOFCと電解セル(EC)の内部に貯蔵される。そして発電時には、貯蔵された炭素と、システムに送り込んだ空気中のO2による反応によって電力を得る。この際、生成されたCO2は再び液体で貯蔵。このため、CASBシステムの充放電によってCO2は排出されない。
実験では、800℃、100mA/cm2の条件下で電極が劣化することなく、10回の充放電サイクルにも世界で初めて成功した。この結果、クーロン効率84%、充放電効率38%、出力密度80mW/cm2を達成した。
研究グループではCASBシステムの実用化に向けて高効率化を図るため、今後、システムの改良を進めていく。