広波長帯域の偏光を直接発生させる、電気駆動の熱光源を開発 慶應義塾大学ら

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慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の牧英之教授、Rice大学らの研究グループは2022年3月9日、カーボンナノチューブが高密度に配列、積層したカーボンナノチューブ配向膜を用いて、広波長帯域の偏光をダイレクトに発生させる電気駆動の熱光源を開発したと発表した。「熱光源からは非偏光しか得られない」という従来の常識を覆す新しい光源となる。

今回、新たな熱光源材料として、1平方センチメートルあたり10兆本と多くのカーボンナノチューブが最密充填されたカーボンナノチューブ配向膜に注目。シリコンチップ上でデバイス化し、可視~赤外で発光する熱光源を開発した。

この素子に通電加熱して発光させた結果、黒体放射由来の広波長帯域の熱放射でありながら、偏光がダイレクトに発生することがわかった。さまざまなカーボンナノチューブの配向方向を持つ素子の作製では、カーボンナノチューブの配向方向に沿った偏光が得られた。

その他、配向膜を構成するカーボンナノチューブの低次元性が大きく寄与していることや、カーボンナノチューブの温度に偏光度が依存して変化することがわかった。カーボンナノチューブ配向膜の電気的/熱的異方性の利用により、発光特性の制御や、マイクロメートルオーダーの局所発光の実演にも成功した。

左図:マイクロメートルオーダーの局所発光を実演したデバイスの模式図、右図:実験で得られた局所発光の近赤外発光画像

偏光を用いた技術は、分析、センシング、光デバイスなどで社会を支える技術の1つとなっており、基礎研究から産業界まで広く使われている。

偏光を直接発生させる光源は現在、レーザー光源が用いられているが、原理上、特定の単一波長の光しか得られず、発光スペクトルが極めて狭い。非常に広い発光スペクトルを有する光源には、白熱電球等で知られる熱光源があり、主に可視~赤外の広い波長領域での光源として広く利用されている。

しかし、従来の熱光源は、非偏光しか発生させることができず、レーザー光源のように直接偏光を発生させることができないため、非偏光の熱光源から偏光を得るには、偏光板を組み込んで偏光を取り出す必要があり、高集積化が難しかった。

偏光は幅広い分野で利用されていることから、開発した広い波長帯域で偏光した光が直接得られる熱光源は、新たな光源として期待される。また、熱光源であるにもかかわらず、ピンセットでもつまめるマクロな材料から直接偏光が得られる現象は、「熱光源は非偏光である」という常識を覆す成果となる。

開発した熱光源は、電気駆動の光源であることに加え、マイクロサイズに微細加工したチップ上の偏光熱光源となることから、今後、分析、センシング、光デバイスなどのさまざまな分野での応用が期待される。

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