独ケムニッツ工科大学の研究チームが世界最小のバッテリーを開発

Illustration: TU Chemnitz/Leibniz IFW Dresden

コンピュータの小型化のトレンドは絶え間なく続いている。1990年代に構想された、センサなどを微小化する「スマートダスト」は、技術開発は続けられているものの、いまだ黎明期からは抜け出せていない。この超小型コンピュータ実用化を阻んでいる最大の要因は、オンチップバッテリーの小型化が困難であることだ。

独ケムニッツ工科大学の研究チームは、バッテリー駆動のスマートダストアプリケーションがサブミリメートルスケールでどのように実現できるかを提示し、プロトタイプとして世界最小のバッテリーを作製した。研究の成果は『Advanced Energy Materials』誌に掲載されている。

超小型バッテリーの製造は、日常的に使用されるバッテリーとは大きく異なる。例えば、エネルギー密度の高いボタン電池のような小型電池は、湿式化学を用いて製造される。このような標準的な技術で製造されたオンチップマイクロバッテリーは、優れたエネルギーと出力密度を実現できるが、実装面積は1mm2を大幅に超える。

研究チームが目指したのは、1mm2よりもさらに小さく、チップ上に集積可能で、なおかつ最小100μWh/ cm2のエネルギー密度を持つバッテリーを設計することだった。

研究では、いわゆる「スイスロール」または「マイクロオリガミ」と呼ばれる製法を用いてバッテリーを作製した。これは、テスラ社が電子自動車用バッテリーの製造に大規模に使用しているのと同様のプロセスだ。高分子材料、金属材料、誘電体材料の薄層をウェハ表面に連続的にコーティングすることで、固有の張力を持つ層状システムを作り上げる。薄い層を剥がすことで、機械的な張力が発生し、自動的に巻き戻ることでスイスロール状になる。よって、自己捲回式円筒型マイクロバッテリーを作るのに外力は必要ない。さらに、この方法は既存のチップ製造技術と互換性があり、ウェハ上で高スループットのマイクロバッテリーを製造することができる。

研究チームは、この方法を用いて、世界最小のコンピュータチップに約10時間電力を供給できる充電式マイクロバッテリーを作製。バッテリーはモノのインターネット(IoT)、小型医療用インプラント、マイクロロボットシステム、超フレキシブルエレクトロニクスなどの分野への応用において、大きな可能性を持つと研究チームは考えている。

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