容易に作製でき、自己修復力に優れた透明防曇皮膜を開発――混ぜるだけで形成可能 産総研

産業技術総合研究所(産総研)は2022年8月8日、作製が容易で優れた自己修復機能を持つ透明防曇皮膜を開発したと発表した。

ガラスやプラスチックなどの透明基材は、高湿度環境下で急な温度変化にさらされると、表面に水滴が形成されて曇りが発生する。これが自動車や建物などの窓ガラス越しの視認性の低下や、医療/分析機器やセンサー、太陽光パネルなどの効率低下の原因になっていた。産総研ではこれまで曇りを防ぐ防曇処理技術の開発に取り組んできたが、従来の方法では作製に数日以上かかる上、作製した被膜が傷ついた場合の自己修復に24~48時間の長い時間が必要だった。

今回の研究では、工業的に用いられているインテグラルブレンド法に注目。同法はシランカップリング反応による無機フィラーや微粒子表面の修飾と、高分子中への均一分散を同時に行うことで、コンポジット材料を短時間かつ容易に作製できる。

同手法を用いることで、人工粘土粒子の前処理が不要になる。また、シランカップリング剤の添加量を調整するだけで、皮膜中の水素結合と静電相互作用との比率を任意に制御でき、水素結合比率を増加させることで、自己修復時間を大幅に短縮できる。

今回開発した技術では、いずれも市販品のポリビニルピロリドンや人工粘土粒子、アミノ基含有水系シランカップリング剤を水中で混ぜて得られた前駆溶液を基材上にスピンコート。加熱/乾燥するだけで防曇性を持つナノコンポジット皮膜が作製できる。

開発したナノコンポジット皮膜で被覆した各種有機/無機基材の外観

作製したナノコンポジット皮膜は、冷却後に高湿度の空気にさらした場合でも全く曇らないなど、過酷な条件下でも長時間にわたり防曇特性を持続した。また、従来の皮膜で自己修復に24~48時間かかっていた傷も、わずか30分で傷がほとんどふさがり、3時間で元通りに修復した。皮膜中の各成分同士が主に水素結合による弱い相互作用で結びついているため、自己修復時間が短縮できるという。

(a)従来技術(上)および新技術(下)で作製したナノコンポジット皮膜の表面につけた傷の修復過程を示す光学顕微鏡像
(b)ナノコンポジット皮膜の自己修復推定メカニズム

今後は企業と連携し、開発したナノコンポジット皮膜の硬度や耐久性、密着性の強化を図る。また、皮膜の安全性の確認や曲面基材などに適した塗装方法などを検討し、企業と連携3年以内の実用化を目指す。

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