銅酸化物の高温超伝導のメカニズム解明へとつながる発見

米ハーバード大学の研究チームは、銅酸化物の高温超伝導体の根底にあるメカニズムを発見したと発表した。結晶中の特定の化学結合の強さと超伝導への転移温度に相関があるとし、高温超伝導体の材料開発に役立つ可能性がある。研究成果は、2018年10月9日付けの『Physical Review Letters』に掲載されている。

「高温」といっても、超伝導の世界では30K(-243.15℃)以上を高温と呼ぶ。1986年に初めて銅酸化物の高温超伝導体が発見されて以来、より転移温度の高い物質が発見され、現在は135K(-138.15℃)に達しているが、室温超伝導体(300K)はいまだ発見されていない。その理由のひとつは、銅酸化物超伝導体のメカニズムが解明されていないためとされている。

銅酸化物超伝導体の結晶中にはCuO2の2次元平面が広がり、銅原子の上部(結晶c軸)に頂点酸素イオン、さらにその上部に頂点陽イオンが結合している。この陽イオンはランタン、ビスマス、銅、水銀など様々で、それぞれ組成ごとに転移温度が異なる。

研究チームは、シミュレーションと実験の結果を比較することで、結晶中の頂点酸素イオンと頂点陽イオンの化学結合が強い物質ほど、超伝導体の転移温度が高くなると結論付けた。

さらに、頂点酸素イオンのひずみは電荷移動にも関係する。頂点酸素イオンがCuO2面に近づいたり離れたりすると、CuO2面との間で電荷移動が発生する。頂点イオンの垂直方向の高速振動により、電荷移動が効果的に引き起こされることが分かった。

高温超伝導における電荷の移動は、電子ホッピングと呼ばれ、結晶格子が特定の振動をすると電子ホッピングが起こりやすくなる。研究チームは、頂点イオンの化学結合が強くなると、結晶格子の振動が増加し、それに伴い電子ホッピングが誘導されて高温超伝導につながることを示した。

例えるなら、波(CuO2面)に浮かぶブイ(Cu)が、つながった凧(頂点酸素イオン)に規則的に引っ張られて、波紋(格子振動)や波しぶき(電子ホッピング)が起こるようなものだ。

「CuO2層、頂点の酸素イオン、陽イオンといった構造単位が、物質の超伝導特性を制御するために動的な結合を可能にする基本的な構成要素であると実証した。今回の成果は、材料の超伝導特性を探求するうえで新たな道を開くだろう」と、研究チームは語る。

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