グラフェンに似た構造を持ち、長い間理論上の炭素材料であったグラフィンの合成手法の確立

米コロラド大学ボルダー校の研究チームが、グラフィンという炭素材料を大量合成する方法を見いだした。グラフィンは、ユニークな電子伝導性、機械特性、光学特性を持つと理論的に予想されており、エレクトロニクス、光学、そして半導体材料研究に対して、新たな可能性を開くと期待されている。

同研究成果は2022年5月9日、「Nature Synthesis」誌に掲載された。

グラフィンは、炭素の六員環同士が炭素―炭素三重結合を介してつながった2次元構造をしており、2010年ノーベル物理学賞の研究対象である炭素材料グラフェンに似ていることから、研究者が長い間関心を持っていた。しかし、10年間以上に及ぶ研究にもかかわらず、これまではナノメートルスケールのグラフィンが合成できるに過ぎなかった。

グラフィンの合成手法は古く、手法が限られていたため、理論的に予想されたグラフィン特性の答えに対して、研究者たちの関心が薄れてきていた。ボルダー校の研究チームは、この問題を再び取り上げ、新しい合成手法を使って結晶性の高いグラフィン合成に成功した。

同手法は、アルキンメタセシスと呼ばれ、炭素―炭素三重結合を持つ炭化水素の化学結合を切断/再結合させる化学反応を熱力学と動力学的に制御するものだ。同手法により、グラフェンに匹敵する電子導電性を持つ上、ユニークな機械特性、光学特性を持つ炭素材料であるグラフィンの新たな合成手法が確立された。

研究チームは、大量生産する方法を見いだすとともに、グラフィンがリチウムイオン電池の製造などの産業用途に利用できるのか、グラフィンのさらなる可能性についても詳しく調査を進めたいと考えている。

「私たちは、グラフィンを実験的にも理論的にも、原子レベルから実際のデバイスまで、多次元的に探求しようとしています」とコロラド大学のZhang教授は述べた。研究チームは、グラフィンの製造コストを劇的に下げ、大量生産に向けた研究を進め、長らく理論的に予想されたグラフィン特性の答えが得られることに期待している。

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