電極の凸凹がカギ――リチウムイオン電池の低温特性を改善する研究

リチウムイオン電池はエネルギー密度が高くサイクル寿命が長いことから、小型家電製品から自動車まで幅広く利用されている。しかし寒さに弱いという弱点があり、0℃を下回る低温環境では電池の性能は著しく低下する。そのため、宇宙探査や極寒冷地での利用には向いていない。

中国科学院と天津大学の研究チームは、凹凸のある炭素系材料をリチウムイオン電池の負極に使用することで、低温でのリチウムイオン電池の性能を大幅に改善した。氷点下をはるかに下回る極寒の地でも、電池を長持ちさせることが可能だとしており、研究成果は『l ACS Central Science』誌に2022年6月8日付で公開されている。

リチウムイオン電池は、温度が低下すると電解液が粘性を生じたり凍結したりして電池性能が低下する。ところが電解質に液体を用いないタイプでも、低温には弱いことが分かっている。

また、これまでの研究で、リチウムイオンは温度が高いと負極に取り込まれやすく、0℃以下では取り込まれにくいことが明らかとなっている。多くのリチウムイオン電池で負極として用いられているのは、平面構造の炭素系材料であるグラファイトだ。そこで研究チームは、負極表面の構造を変化することで、電池の性能に違いが出るかを調べることにした。

まず、コバルトを含むゼオライト様イミダゾレート構造体(ZIF-67)を超高温で加熱し、炭素系の12面カーボンナノ球を作成した。このナノ球は表面がでこぼこしているため電荷の移動に適している。

作成した炭素系ナノ球を負極、リチウム金属を正極に用いたコイン電池を試作したところ、-20℃の低温下でも常温の85.9%の電荷を保持し、安定性を示した。一般的なリチウムイオン電池は、-20℃ではほとんど充電できないことを考えると、大きな成果だ。またさらに低温の-35℃の環境下でも充電可能で、取り込んだ電荷のほぼ100%を放出できた。

このようにリチウムイオン電池の負極を特殊な形状の炭素系材料にすることで、リチウムイオン電池の最大の課題が解決できた。スマートフォンや電気自動車など世界中で使用されている製品の性能向上や、これまで不可能だった極寒地域でのリチウムイオン電池の利用が期待される。

関連リンク

Riemannian Surface on Carbon Anodes Enables Li-Ion Storage at −35 °C

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