NASA開発の宇宙向け技術を地上に――30年の寿命を実現したサステナブルなバッテリー「Energy Storage Vessel」

バッテリー開発スタートアップの米EnerVenueは、NASAが30年以上にわたって国際宇宙ステーションやハッブル宇宙望遠鏡などの電力供給に使用してきた技術をベースに、サステナブルかつ長寿命のバッテリー技術を開発している。NASAが開発したニッケル水素(Ni-H2)電池は、温度変化の激しい過酷な環境にも耐えることができるため、宇宙での使用に適している。また、安全性が高く、電池の寿命も非常に長い。さらに電池は完全にリサイクル可能で、有害な廃棄物を出さず、化学的な性質から発火の危険性もない。

EnerVenueの技術の背景にあるのは、スタンフォード大学教授のYi Cui氏による研究成果だ。同氏は、このスタートアップの会長兼最高技術顧問でもある。Cui氏は、NASAの長期間駆動型Ni-H2電池の技術を地球上で実用化するために、コストを劇的に下げる材料を使う方法を考え出した。この技術により開発された「Energy Storage Vessel」と呼ばれる水素電池モジュールは、電力会社やエネルギー開発会社からの高い要求に応えている。

Energy Storage Vesselは、直径142 mm 、長さ1806 mm、重量は40kgで電池容量は1200Whだ。1日に3回まで充放電が可能で、寿命は30年、3万サイクルの充放電が可能だ。これはリチウムイオン電池の3倍以上だという。また、Ni-H2電池は、リチウムイオン電池とは異なり、熱暴走や発火の危険性が少ないことが確認されている。同社によれば、20年/2万サイクル後に新品の88%以上の容量が保たれていることを保証するという。

EnerVenueのEnergy Storage Vesselは、現在、全米の電力会社の試験場に配備されている。これらのテストサイトは、EnerVenueの主張を検証するもので、並行してEnerVenueは、海運、石油・ガス、鉱業、島嶼部でのディーゼルの代替など、産業市場にも売り込んでいる。

EnerVenueのCEOであるHeinemann氏は、「ストレージは、余剰発電を確実に回収し、必要なときに使用することで、炭素集約型のエネルギーミックスを減らし、より安定したエネルギー供給を実現するという重要な役割を果たします。長期的には、EnerVenueはその技術を住宅空間にも応用できると考えています 」と語っている。さらに、「リチウムイオン電池がもたらす潜在的な火災の危険性に注目が集まる中、火災に強く、寿命が30年を超える家庭用電池は、屋根裏など構造上使われていない部分に組み込むことができ、大きな市場があると信じています」と付け加えた。

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