大腸菌をベースにしたマイクロロボットが、体内で治療薬を運び病巣に挑む

Akolpoglu et al., Sci. Adv. 8, eabo6163 (2022).

ガン治療法の開発に取り組む独Max Planck Institute for Intelligent Systems(MPI-IS)の研究チームは、2022年7月発行の「Science Advances」誌に論文を掲載した。論文のテーマは、腫瘍の治療に使用する人工のコンポーネントを大腸菌に装着し、体内での移動を制御できる「マイクロロボット」の開発だ。

ロボット工学と生物学の組み合わせといえるこのマイクロロボットは、大腸菌に治療薬を運ぶリポソーム(リン脂質からなるカプセル)と磁性粒子を装着したハイブリッドな形態だ。細菌に人工のコンポーネントを組み込む技術の確立は長年の難題であったが、同研究チームは、試行した100種のうち86種の細菌へのコンポーネントの追加に成功した。

さらに論文は、その大腸菌を病巣まで誘導する技術を説明している。マイクロロボットの移動には、磁場を利用する。研究チームは、生体組織を模したさまざまな「コース」を使用して、このマイクロロボットの動きを体外から制御できることを確認した。

治療対象(腫瘍スフェロイド)の周囲に十分な数のマイクロロボットを蓄積させ、そこに近赤外線レーザーを照射する。照射により摂氏55度に達したリポソームは融解し、封入された薬剤を放出する。リポソームはこれ以外にも、腫瘍の近傍のような酸性の環境では自発的に開く。

MPI-IS物理情報学部の元ポスドクで研究を率いるYunus Alapan博士は、「このオン・ザ・スポットの配送手段は、患者にとって侵襲性が低く、痛みがなく毒性も最小限で、投薬する場所を絞って効果を発揮する」と述べている。

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Bacteria-based biohybrid microrobots on a mission to one day battle cancer

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