- 2024-9-3
- 技術ニュース, 海外ニュース, 電気・電子系
- ACS Energy Letters, ペンシルベニア州立大学, ポリマー層, リサイクル, リチウムイオン電池, 全固体電池, 固体電解質, 学術, 複合固体電解質, 電解液
電解液ではなく固体電解質を用いる全固体電池は、エネルギー密度や安全性が高いため、従来の電解液を用いるリチウムイオン電池に代わる新しい電池として期待されている。しかし、固体のリチウム電池はリサイクルがより困難であり、環境に優しくないという大きなデメリットがある。
アメリカ・ペンシルベニア州立大学は2024年7月8日、同大学の研究チームが固体リチウム電池の設計を再構築し、簡単にすべての構成要素をリサイクルできる全固体電池を開発したと発表した。
従来のリチウムイオン電池は、リサイクル過程で構成要素が混ざり合い黒い塊となる。この黒い塊の中には、電池に必要な材料が豊富に含まれているが、それぞれを分離することは難しい。固体電池の場合、この黒い塊にさらに固体電解質が混ざり合うため、問題はより深刻となる。
そこで研究チームは、リサイクルを容易にするために電極と電解質の境界面に2つのポリマー層を挿入した。リサイクル過程でポリマー層を溶解することによって、電極と電解質が混ざり合うことを防ぎ、簡単に分離することができる。回収した金属と複合固体電解質の粉末は、冷間焼結により結合する。冷間焼結とは、粉末状の材料を、溶媒を用いた加圧によって低温下で緻密な形状に結合する技術である。冷間焼結により結合した電極と固体電解質にポリマー層を加えることで、電池を再構築し、電池全体のリサイクルが可能となった。リサイクルにより再構築した電池の性能評価では、元の電池の放電容量の92.5〜93.8%を達成している。
全固体リチウム電池の商業的な開発はまだ初期段階であり、実用化には至っていない。しかし研究チームは、今回の研究成果はリサイクル可能な電池を設計するための重要な洞察とアイデアを与えるとしている。将来的に、1回の充電で携帯電話やノートパソコンなどが数日間使用できるようになるかもしれないという。
研究成果は、『ACS Energy Letters』誌に2024年6月12日付で公開されている。
関連情報
Making rechargeable batteries more sustainable with fully recyclable components