- 2022-10-15
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- Journal of Experimental Psychology: General, Sam Gilbert, スマートフォン, デジタルデバイス, デジタル認知症, バックアップ, パソコン, ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)
分からないことをすぐに調べられたり、自分や家族の予定を共有したりと、スマートフォンやパソコンといったデジタル機器は非常に便利だ。一方、こうしたデジタル機器への過剰な依存は認知機能を低下させる、いわゆる「デジタル認知症」の原因となるという懸念も生じている。
ところが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、人々はデジタル機器を脳の外部メモリとして上手に利用し、記憶能力を高めていると『Journal of Experimental Psychology: General』で発表した。
研究チームは、18~71歳までの158人を対象に、コンピューターを利用したテストを実施した。参加者は、スクリーンに表示された複数の円の絵を、左右の正しい位置にドラッグするように指示される。円にはそれぞれ番号が割り当てられ、ドラッグ先は場所によって価値の「高」「低」が異なる。より多くの円を、価値の高い場所に正しく動かせたら報酬が増えるというルールだ。
参加者は、このテストを16回繰り返した。そのうち8回は自分で円の情報を記憶する必要があるが、残りの8回はデジタルデバイスへの保存が許された。
実験の結果、参加者は、高価値の情報の方をデジタルデバイスへ記録する傾向があることが分かった。その場合、高価値の円に関する記憶が18%改善した。さらに、低価値の円についてはデバイスに情報を保存していないにも関わらず、その記憶は27%改善することも分かった。
「デジタルデバイスは、人々が保存した情報を思い出すのに役立った。これについては驚くことではないが、デバイスに保存していない情報も思い出しやすくなることが分かった」と、研究チームのSam Gilbert博士は語る。
人々は、自分自身で覚える必要がある場合、脳の記憶領域を最も重要な情報に割り当てる。しかし、デジタルデバイスが使える場合、重要な情報はデバイスに、それほど重要でない情報は脳に保存する、といったように使い方を変えるようだ。今回の研究結果は、電子機器が外部メモリツールとして機能し、人間はこれまで関心を持たなかった情報も覚えられることを示唆している。
ただし、一番大切な情報は、必ずバックアップする必要がある。実験からは、デバイス任せにした情報は、忘れやすくなっていることも示された。Gilbert博士も「バックアップがないと、電子機器が壊れた時に、重要度の低い情報しか自分の記憶に残らない可能性がある」と、注意を促している。