金属フリー触媒を用いてセラミック前駆体高分子の室温合成に成功――ハイブリッド材料を試作 東北大

東北大学は2022年11月1日、同大学大学院工学研究科の研究グループが、金属を含まない触媒を用いてセラミック前駆体高分子を室温下で合成することに成功したと発表した。

温室効果ガスの排出量削減に向けて、機能性材料の製造工程におけるグリーン化のニーズが高まっている。

環状シロキサンは、ケイ素と酸素のSi-O-Si結合からなるシロキサン結合を有する環式有機化合物の総称で、ケイ素を反応点として、多種多様な有機官能基を導入することができる有機-無機ハイブリッド材料の開発に適するといわれている。

ケイ素と酸素を用いるシロキサン系高分子の合成では貴金属触媒を用いるため、反応温度や触媒金属の残留による着色、劣化などが課題となっている。一方で、金属フリーであるルイス酸のトリス(ホウ素触媒)を使用する合成では、副反応のゲル化が課題となる。

同研究グループは今回、ホウ素触媒を用いながら、モノマー比やモノマー濃度、金属フリーでの反応時間を含めた反応条件を最適化することで、環状シロキサン前駆体高分子を室温合成することに成功した(冒頭の画像)。同分子は、ポリマー主鎖に炭化水素スペーサーを含まず、後処理や置換基導入が可能なものとなっている。

TMCSモノマー濃度を0.4M未満に下げたほか、反応時間を2時間に短縮したことで、前駆体高分子の分岐構造でのゲル形成を抑制している。前駆体高分子は、熱安定性を向上するシルセスキオキサン/シロキサン成分や、置換基導入のための反応性Si-H基を含んでいる。

今回、前駆体高分子の熱硬化反応を用いて、光透過性や疎水性、630℃超の熱安定性を兼ね備えた自立型フィルムを作製した。同フィルムは、共重合体成分や架橋方法を変更することで誘電特性を調整できる。

熱硬化反応のメカニズム

今回開発したハイブリッド材料は、金属フリー、低温反応、再機能化可能といったメリットを有するため、電子部品の封止材や接着剤、耐熱性コーティング剤などへの応用が期待される。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る