- 2022-11-22
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- Science, ウェアラブルデバイス, テキサス大学オースティン校, プラスチック材料, ポリマー, モノマー, ロボット, 半結晶高分子, 天然ゴム, 学術, 重合反応, 青色LED
テキサス大学オースティン校の研究チームは、木や貝などの生物からヒントを得て、部位によって硬さを変えられるプラスチック材料を開発した。光と触媒のみを利用して、同一分子の硬度や弾性など物理的特性を制御することに成功した。新材料の強度は天然ゴムの10倍にも及び、より柔軟なウェアラブルデバイスやロボットの実現につながる可能性がある。研究成果は、『Science』誌に2022年10月13日付けで公開されている。
研究チームはこれまで、皮膚や筋肉などの特性を模倣した合成材料の開発に取り組んできた。生物には、強度や柔軟性といった異なる性質を併せ持つ構造が存在する。しかし、合成材料でこのような構造を模倣するには異なる種類の材料を使用する必要があり、異種材料間の接合部から崩壊したりするなどの問題があった。
そこで研究チームは、光によって材料の構造を制御し、硬さや伸縮性を変化させることのできるプラスチックを開発した。
材料の構造を制御する役目を担うのは、モノマーの重合反応に用いる触媒だ。モノマーに添加して可視光を照射すると、合成ゴムに見られるような半結晶高分子を生成する触媒を見出した。この手法を用いてポリマーを合成すると、光が当たった部分は硬くなり、光が当たらない部分は柔らかいままで伸縮性が維持される。異なる性質を持つ1つの材料でできているため、一般的な複合材料よりも強度が高く、長く伸ばすことができた。
モノマーと触媒は市販品、可視光は安価な青色LEDを使用している。また反応は室温で行われ、反応時間は1時間未満だ。有害廃棄物の使用も最小限に抑えられているため、迅速かつ安価で、エネルギー効率が高く、環境にも優しい手法と言えるだろう。
研究チームは、この材料が医療機器やウェアラブルデバイス、ロボティクス分野で応用されることを想定している。そのためにも、この材料を用いてさらに多くの構造物を製造し、有用性を検証していくとしている。