有機太陽電池のエネルギー損失と無秩序さの相関――最適なデバイスの設計指針を提案

プリンストン大学とアブドラ王立科学技術大学の研究チームが、有機太陽電池のエネルギー損失を記述するための項目を提案し、最適なデバイス作製の設計指針を提示した。同研究成果により、従来の有機太陽電池の製造方法が見直される可能性があるという。

同研究成果は2022年11月18日、「Joule」誌に掲載された。

有機太陽電池は、現在多く用いられているシリコン太陽電池と異なり、軽量かつ柔軟であり、小型化できるため、建築物やウェアラブルデバイスなどでの応用が期待できる。しかし、基本的な動作原理が完全に解明されていないため、デバイスの性能向上は進んでいない。

有機太陽電池のエネルギー損失に影響を与える因子を理解することは、その効率をさらに向上させ、新しい材料開発のための設計指針を確立するために不可欠である。従来の研究では、エネルギー損失の計算に構造の無秩序さを考慮していなかったため、材料に関係なく0.6電子ボルト程度の値が得られていたという。

そこで研究チームは、ドナー/アクセプター層の単一接合型や、混ざったバルクヘテロジャンクションなどのデバイス構造で外部量子効率測定の温度依存性からエネルギー損失値を決定し、エネルギー損失と無秩序さの相関を調べた。その結果、エネルギー損失値が無秩序さの項の2乗に比例して増加することが分かった。

研究チームは、より効率の高いデバイスを実現するために、無秩序さを最小限にすることを推奨した。通常、有機太陽電池の設計では、構成要素がすべて結晶あるいは非晶質である均質混合物か、一部が結晶で他の部分が非晶質である不均質混合物を作製するかを重視する。これまでは、有機太陽電池内にある程度の不均質があった方が全体の性能に有利だと考えられていた。研究チームは、不均質混合デバイスでは無秩序さが高く、エネルギー損失が大きいため、結晶あるいは非結晶の均質混合物の方がエネルギー効率において優位に立つことを実証した。

「他の研究チームがわれわれの研究を利用してより効率の高いデバイスを作り、最終的に有望な太陽電池設計のための新しい性能評価基準となることを期待します」と、同研究論文の責任著者であるプリンストン大学のBarry Rand准教授は語った。

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