核融合炉のための材料開発――貝殻真珠層類似の微細構造を持つ高強度タングステン合金

Composite image: Korea Institute of Fusion Energy

バージニア工科大学とパシフィック・ノースウェスト国立研究所の研究チームが、核融合反応で発生する高温や照射条件に耐えられる可能性のある、貝殻構造を模倣したタングステン合金の耐久性要因を解明した。

同研究成果は2023年1月11日、「Scientific Reports」誌に掲載された。

太陽の中心では、核融合反応により大量の熱が発生するため、温度はおよそ1600万℃に達する。核融合反応のエネルギーを電力に変換するためには、反応中の高温/高照度環境に耐えられる、核融合炉の材料開発が必要である。

タングステン(W)は、地球上に存在する元素の中で最も融点が高い物質であるため、核融合炉の材料として最適と考えられている。他の金属と混ぜるともろくなる性質があるが、これまでの研究で、鉄(Fe)やニッケル(Ni)を適当な割合で混ぜ合わせると、元のWより丈夫で、かつ融点の高い合金になることが分かってきた。

研究チームは、特殊な熱間圧延法により、貝殻の真珠層のような微細構造を持つW-Fe-Niからなる高強度合金を作製した。真珠層は、炭酸カルシウムを主成分とする無機物と少量の有機物からなる微細層状構造をなし、虹色に輝く色合いと高い強度が特徴だ。

研究チームは、走査型透過電子顕微鏡を用いて、W合金の原子構造を分析した。また、エネルギー分散型X線分光法を組み合わせたアトムプローブトモグラフィーにより、材料界面のナノスケール組成をマッピングし、高強度の要因を調べた。

その結果、W合金の構造には、ほぼ純粋なWからなる「硬質相」とNi-Fe-Wの組み合わせからなる「延性相」の2つの相が確認された。そして、高強度の要因は、「硬質相」と「延性相」の異相間における、高い格子整合性にあることが分かった。

研究チームは、核融合炉の極端な温度や照射条件下で同材料がどのように振る舞うかを観察するなど、安全性についても研究している。さらに、同研究成果を他の材料分野に応用するため、異種界面を持つ材料の構造を最適化し、その強度を検証するマルチスケール材料モデリングにも取り組んでいる。

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